2026年5月22日金曜日

東京異空間427:《樹を見上げて》日高理恵子

 



東京国立近代美術館のコレクション展を観ていて、思わず、「おー!すごい!」と声を出しそうになった作品に出会いました。220×600cmという圧倒的な大画面に描き上げた大作で、タイトルは《樹を見上げてⅦ》、作者は日高理恵子という、初めて知りました。

1.日高理恵子

日高理恵子は、1958年、東京都生まれ、武蔵野美術大学に学ぶ。一貫して「樹木」をモチーフに描き続けている日本画家。日本画の素材である岩絵具を麻紙に重ねる技法を使いながら、伝統的な様式にとらわれないモノクロームの大画面作品を制作している。

2.《樹を見上げてⅦ》 1993

東京郊外にある自宅近くの神社境内で山桜などをその場でドローイングしながら、4回の冬を越して完成したのがこの大作。絵の前に立つと、作者が感じた不思議な感覚を追体験できるかのような、未知なる空間を感じ取れる。

作者は次のように語る。

「見つめれば、見つめるほどに見えてくる測りしれない距離、この測りしれない距離・空間をリアルに感じ続けるために樹を見上げ、描く」




(1)《樹》1983年

樹を描き始めたきっかけとなったのが、この作品《樹》。1983年の大学卒業制作として描かれたもので、原野に立ち並ぶ樹林と地平線を捉えた「水平の視点」による初期の作品である。後に作家は、樹の真下から空を見上げる独自の「見上げる視点」の作品群、『樹を見上げて』シリーズへと展開していく。


(2)《樹を見上げてⅠ》 1989年


(3)《樹を見上げてⅡ》 1989年


(4)《樹を見上げてⅤ》 1991年


3.シリーズの変遷

日高理恵子は1980年代から一貫して「樹木」をモチーフにしているが、その関心の変化に伴って作品のシリーズタイトルを「樹を見上げて」→「樹の空間から」→「空との距離」へと変遷させている。

(1)「樹を見上げて」シリーズ(1980年代後半〜)

作家が「樹を真下から見上げる」という独自の視点を確立したシリーズ。

(2)樹の空間から」シリーズ(1990年代後半〜)

樹木の枝葉によって切り取られた「余白」や「間(ま)」に焦点が当てられたシリーズ。

(3)「空との距離」シリーズ(2002年〜)

作家の関心が「樹の向こう側に広がる空や、そこに至る測りしれない空間そのもの」へとより深くシフトしたシリーズ。

どのシリーズも同じ樹の絵に見えるが、彼女の関心は「樹そのもの」から「樹が浮き上がらせる空間」へ、そして「その向こうにある空との距離」へと、より深く、より本質的な絵画空間へと進化を遂げている。

4.絵画と写真

作品は極めて写実的であることから、一見するとモノクロの写真のように見える。しかし、写真を参考にして描くこともなく、日高は「写真のレンズを通した空間」を徹底的に拒絶する。

写真はレンズの焦点深度や歪みがあり、一瞬の固定された光しか捉えられない。しかし、人間の目は常に焦点が動き、風の揺らぎや、雲の動きによる光の変化を同時に感じている。 現場で自分が「見つめ続けた時間」と、その時に感じた「空との距離感」を肉体に記憶させ、それをアトリエで巨大な和紙へと写し替えていく。

そこには、肉体的にも過酷な作業、努力が行われている。作者は、狙った樹木の下に立ち、顔を完全に天に向け、空と顔面が平行になるほどの角度で首を固定し、数時間描き続ける。そうした野外での過酷なドローイング のあとに、大画面に日本画の岩絵具の線で樹木の輪郭を描き、さらに絶妙な距離感、空気感を表現するため、一度塗った岩絵具を、カッターの刃やサンドペーパーであえてガリガリと削り落とすという。こうした野外での「見上げる苦闘」から、アトリエでの「削り出す苦闘」を経た「闘いの記録」であるからこそ、観る者を圧倒する迫力ある作品となっている。


日高の作品を実見したのは、この一点だけですが、ネットからシリーズの画像を引用しました。今後、機会があれば、その他のシリーズの絵も見てみたいと思います。

2026年5月21日木曜日

東京異空間426:タイサンボク

 


近くの公園にあるタイサンボクにたくさんの白い花が咲いています。高いところに咲いているので、望遠レンズで花をアップして撮ってみました。

1.タイサンボク

タイサンボクは、モクレンやコブシなどと同じ仲間。早春から続くこのモクレン属の開花の最後を飾るのが、タイサンボクとなる。

タイサンボクは、ときに高さ20mになる大木で、北米南東部原産である。日本に渡来したのは明治時代初期で、新宿御苑に植えられたのが始まりとされる。のちに第18代アメリカ大統領であったグラント将軍夫妻が、1879年(明治12年)に来日した際に、婦人が上野公園に記念樹として植えたことから「グラントギョクラン」(グラント玉蘭)とも呼ばれる。このタイサンボクは、現在も上野恩賜公園内の上野東照宮近くに現存しており、初夏には大きな白い花を咲かせるという。

* 上野公園内にあるグラント将軍植樹碑

* グラントギョクラン


2.タイサンボクの花

白い9枚の花被片からなる、大きな碗状の花が上向きに咲く。花の形から「大盞木」(たいさんぼく、盞は「さかずき」)とされ、その後「泰山木」の字が充てられたともいわれる。花期は初夏(5–7月頃)。 1個の花は3日間ほど咲く。花の少ない梅雨の晴れ間に咲くため、遠くから目立つが、たいていは高い場所にあって観察しにくく、一輪あたりの寿命は1~2日と短い 。 花には、「前途洋々」「威厳」などの花言葉がある。


























2026年5月18日月曜日

東京異空間425:緑陰


5月の中旬にして、早くも真夏日になったようです。緑の陰を求めて、公園まで散歩してきました。

1.木陰

木陰で、ベンチに座る人、ジョギングをする人、スケッチをする人、ブランコで遊ぶ子供など、それぞれ思い思いの時間があるようだ。











2.葉陰

陽に照らされた葉の裏側の透けた緑。葉陰に鳩も涼を求めて。









3.緑水

池の亀はのんびりと甲羅干し。水面に映る緑がきらめく。









東京異空間427:《樹を見上げて》日高理恵子

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