2020年1月25日土曜日

美術館点描:渋谷から原宿

前回のブログでは、ギャラリーを観てきましたが、今回は、渋谷と原宿にある美術館を観てきました。
ソール・ライターの絵画など、このコーナーのみ写真OKだった

まずは、Bunkamuraザ・ミュージアムで行われている「永遠のソール・ライター」。ニューヨークが生んだ伝説の写真家といわれるソール・ライター(1923-2013)は、日本では2017年に同じBunkamuraザ・ミュージアムで「ソール・ライターのすべて」が開かれて、大きな反響を呼んだ。ソール・ライターは、近年になって発見された、いわば忘れられた写真家だった。これまで整理されず、知られていなかった写真の発掘作業が今も進められているという。
画家を目指していたというソール・ライターの写真は、濡れたガラス越しに街を歩く人を撮るなど、大きなボケを活用して都会にたたずむ情景を醸し出している。そして絵画的な構図、またカラーは赤をうまく使った写真、絵画で言えば、ヴァロットンのようなナビ派を思わせる雰囲気がある。(3月8日まで)
 
会場入り口のポスター

次に松涛美術館で行われている「サラ・ベルナールの世界」。サラ・ベルナールといえば、ミュシャのポスターでよく知られている。というより、ミュシャは、ベルナールによってその才能を発揮することができたのだ。また、ラリックもベルナールによって作品のインスピレーションを得ている。
パリ世紀末のベルエポックに咲いた華、サラ・ベルナールの人生を、当時の写真や、衣装、装飾品などと、ミュシャのポスターやラリックの作品を展示し、多面的に紹介している。(1月31日まで)




なお、この美術館は白井晟一の設計のもとに昭和56年(1981年)に完成した。
小規模ながら、中央が吹き抜けになっていて下には水が流れて清々しく、落ち着いた美術館である。
中央の吹き抜け



松涛美術館入口


渋谷から原宿に行って、太田記念美術館で開催されている「肉筆浮世絵名品展」。開館40周年記念ということで、太田美術館が所蔵する肉筆画の名品をおしげもなく展示している。なかでも、やはり葛飾北斎の肉筆画が際立っている。
また北斎の娘、応為の「吉原格子先の図」は、灯りに照らされる格子越しの花魁が美しい。明治期になると河鍋暁斎の「達磨の耳かき図」はユーモアがあり、美人画としても優れている。さらに小林清親の「両国橋之図」は夕やみに浮かぶ橋の構図が見事だ。
太田記念美術館の入口

会場前のポスター

ところで、前回のブログに取り上げたギャラリーでは写真OKでしたが、今回の美術館は、やはり展示作品の写真はダメ。
何故でしょうか?著作権のからみ?作品が痛むから?それとも、他の鑑賞者の邪魔になるから?いや、単にこれまでもそうしているから?どんな理由ががあるのかは知りませんが。
海外の美術館では写真を撮れるところが多いです。日本でも東京国立博物館の常設展など、一部では写真OKなところもあります。最近では展示の一部だけを写真OKとして、SNSなどによる宣伝効果を狙っているところもあります。
いずれにしても、美術鑑賞と共に、写真愛好家としては作品の写真も撮りたいものです。
ということで、今回は、入り口付近にある展覧会のポスター、美術館の建物の写真でガマン!?
原宿駅:新しい駅舎が横にできつつある。

 追記:
写真家奈良原一高 氏が1月19日に逝去された享年88歳
拙ブログを立ち上げたとき、一番最初にとりあげたのが世田谷美術館「奈良原一高のスペイン―約束の旅」であった。(1月26日まで)
また東京近代美術館「MOMAコレクション」で、初期の写真が展示されているコーナーをじっくり観てきた。(2月2日まで)
さらに半蔵門にあるJCIIフォトサロンの「奈良原一高 人間の土地/王国 Domains展」鑑賞してきた。(2月2日まで)
どれも、心に残る作品である。
以下は、東京近代美術館での展示作品で、これらは撮影可であった。





2020年1月22日水曜日

ギャラリー点描:銀座から京橋

銀座から京橋にかけてギャラリーをのぞいてきました。

まずは、シャネル・ネクサス・ホールで開かれている「ヤコポ バボーニ スキリンジ展」。シャネルのビルに入るのはドア・マンがいて躊躇してしまうが、思い切って入ったら奥にあるエレベータに直行する。4階に上がると、薄暗い会場に写真が展示されていて、静かに音楽が流れている。
ヤコポ バボーニ スキリンジは1971年生まれの現代音楽作曲家という。2007年から実験的に人体に楽譜を書く、新しい作曲法へ取り組み、今回は、その写真を展示している。ギャラリーは、人体(モデル)、写真、音楽が一体となった不思議な空間を構成している。(2月16日まで)





エレベーターのドアは、キラキラと色が変化し輝く。いかにもシャネルらしいデザインだ。


次に入ったのはポーラ ミュージアム アネックスで開かれている「無形にふれる」という展覧会。3階に上がると贈られた見事な花輪が置かれている。

能、京舞、神楽といった伝統文化から、「無形にふれる」というコンセプトで、新たな美意識を呼び覚ますかのように、ギャラリーがデザインされている。もっとも興味が引かれたのは、石見神楽に使われる大蛇(おろち)と豪華絢爛な衣装だ。(2月16日まで)









もうひとつ、京橋にあるLIXILギャラリーに入った。ここでは「ものいう仕口」という白山麓で集められた民家の木材で構成される展示。「仕口」というのは、和風建築で部材を直角またはある角度で接合すること、また、その接合部分を指すという。民家の柱などに使われていた部材は、太く生き抜いてきた力強さを感じさせるとともに、このように並べられると素朴な美しさを感じる空間を作っている。(2月22日まで)



別の部屋では、「白磁のかたち高橋奈己展」が開かれていた。高橋奈己という若手陶芸家の作品である。鋭いエッジとゆるやかな曲線から美しい陰影を生み出し、ギャラリーを一つの造形世界にしている。(1月21日まで)



京橋を歩いていると、ギャラリーではないが、尖塔を乗せた建物を見つけた。これは、相互館110タワーという第一生命の所有する建物。実は今のは3代目で、初代は辰野金吾の設計により1921年に竣工した。しかし、辰野は1919年に本館の完成を見ることとなく急逝した。辰野<堅固>といわれるように建物は関東大震災でも倒壊することはなかった。(辰野金吾については、このブログ「東京異空間19:日本銀行から東京駅・辰野金吾」も参照)
現在のものは、当時のイメージを再現して2011年に第一生命保険110周年を記念して建てられた。




美術館では、カメラ×のマークがあり、作品を撮ることはできないことが多いが、ギャラリーだとカメラOKということがあります。今回のいくつかのギャラリー、カメラでその雰囲気、美空間を少しは紹介できましたでしょうか。
京橋を歩くハト

2020年1月18日土曜日

奥多摩・鳩ノ巣散策

奥多摩の鳩ノ巣駅で降りて、鳩ノ巣渓谷から将門神社などを散策してきました。
ロウバイ

JR青梅線・鳩ノ巣駅

ここ鳩ノ巣は、江戸期に多摩川に上流から切り出した一本木を流す筏師の飯場に祀った水神社の森につがいの鳩が巣を作ったところから、この名前が付いたという。
巨石・奇石の間を流れる水はエメラルドグリーン色になっていて美しい。
巨大な一枚岩の下を流れる川には、双竜の滝、その崖の上には水天宮の祠が置かれています。
双竜の滝


エメラルドグリーンの流れ

この一枚岩の上に水神社がある

双竜の滝

水神社


水神社

巨石の上に伸びる木

その根も龍のよう


水神社


巨石・奇石の間を流れる多摩川



ホテルの窓から



渓谷の反対の山側には、将門神社があります。ここにも将門伝説があるんですね。天慶の乱(935-940年)に敗れた平将門の没後、その息子、将軍太郎良門が亡き父の霊像を祀ったことに始まるという。
明治期になると、将門を祀ることは許されず、鳩ノ巣駅の北にある熊野神社に合祀されていたが、地元の人たちの努力により昭和50年に再建されたそうです。この急な山道の上にある神社は、その後も、地元の人たちの手で守られ、信仰されてきたという。
境内には、将門の愛姫、御幸姫観音像があり、また穴沢天神社もあります。
将門神社

将門神社鳥居

将門神社の社



将門神社・狛犬


天沢天神の奇石

説明を追加

三面不動尊

三面不動尊


御幸姫観音



急な細い山道を登る



鳩ノ巣渓谷に架かる橋


JR青梅線

この散策で、険しいが美しい渓谷美と、いまも続く地元の人々の信仰心を感じることができました。ただ、この辺りも昨年の台風19号により大きな被害を受け、いまも散策路が通行止めになっているところがあります。一日も早い復興が望まれます。

東京異空間200:キリスト教交流史@東洋文庫

  東洋文庫ミュージアム・入口 東洋文庫ミュージアムで開催されていた「キリスト教交流史ー宣教師のみた日本、アジア」をテーマとした貴重な本を観てきました。そのなかで、特に印象に残った次の 3 冊を取り上げてみたいと思います。 『破提宇子(はだいうす)』恵俊(ハビアン)  1...

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