2023年4月26日水曜日

サンザシを撮る

自宅にあるサンザシが花をつけたので、撮ってみました。

サンザシは、江戸時代に中国から薬用の樹木として小石川御薬園に持ち込まれたそうです。「山査子」と呼ばれる熟すると赤くなる果実は生薬として、漢方では、高血圧、健胃に効果があるということです。また、ドライフルーツとしても食べられるそうです。

自宅のサンザンシは、西洋サンザシのうちのベニサンザシだと思います。育てやすい樹種で、毎年、この時期に美しい紅色の花をたくさんつけてくれます。
















2023年4月25日火曜日

東京異空間105:深大寺の不思議?

深大寺・本堂

神代植物公園から深大寺に行きました。途中、段差があり、深大寺のほうが低くなっています。これは国分寺崖線で、武蔵野台地にはこうしたハケと呼ばれる崖線が多く見られ各地で湧水を生んでいます。深大寺は、縁起によると、奈良時代733年(天平5)に満功上人が創建したと伝えられ、都内では浅草寺につぐ古刹です。

深大寺では、いくつかの不思議に出会いました。

1.「神代」と「深大」の不思議?

先に行ったのは「神代」植物公園で、こちらは「深大」寺で、どちらも「じんだい」と読むが、何故隣り合っている場所にもかかわらず異なるのか?それぞれの歴史が刻まれていた。

江戸時代、深大寺周辺は「深大寺村」と呼ばれていたが、明治22年(1889年)に、この深大寺村と佐須村などいくつかの村が合併して、神奈川県北多摩郡「神代村」となった。戦後は、昭和27年(1952年)に「神代村」が町制施行により東京都北多摩郡「神代町」となったが、昭和30年(1955年)に調布市と神代町が合併して、現在の調布市が誕生した際に、神代町は廃止となり、このあたりは「深大寺町」と町名変更があり、「神代」という行政上の地名としては消滅した。

いっぽう、東京府は、昭和15年(1940年=皇紀2600年)に、「帝都防衛」などを目的に、東京区内の周囲を緑で囲むグリーンベルト構想が起こり、調布飛行場の周辺を「防空緑地」とするため買収し、当時は「神代村」であったことから、「神代緑地」と名づけた。そして戦後、昭和36年(1961年)、この緑地跡に植物園を開園する際、「神代緑地」の「神代」の名称を引きつぎ、「神代」植物公園としたことから、「神代」の名が残った。(なお、小金井公園もこうした都市計画の一環であったことは、東京異空間83:「小金井公園の桜」で触れた。)

ところで、明治22年に合併した際に何故「神代」という名となったのかは、よくは分かっていないようだ。ただ、この年に町村制が施行され、町村が合併した際に「神代」という名を付けたところが千葉県 、富山県などにもみられる。おそらくは、当時の時代背景として天皇を崇敬する国家神道が広まっていたことから「神代(かみよ)」としたのではないかと思われる。同じ年、明治22年には、大日本帝国憲法が公布され、その第一条には、「大日本帝国ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」と掲げられた。

いずれにしても、神代植物公園と深大寺が隣接してありながら、どちらも「じんだい」というのは、紛らわしいが、公園と寺院ということでそれぞれの特徴を表しているともいえるだろう。

深大寺・山門

深大寺・本堂

深大寺・本堂とナンジャモンジャの木

本堂

大黒天・恵比寿尊

賓頭盧尊者

2.深大寺のおみくじの不思議?

深大寺の名は、仏法を求め天竺(インド)へ旅した玄奘三蔵を守護した水神「深沙大王(じんじゃだいおう)」に由来しているとされる。境内には、深沙大王を祀る深沙堂が建てられている。また、本堂の横に、元三大師堂が建てられている。ここに祀られているのは、元三大師(がんざんだいし)こと慈恵大師・良源(912-985)である。慈恵大師は、比叡山中興の祖といわれ、天台宗である深大寺にも祀られている。真言宗で大師信仰といえば空海だが、天台宗では元三大師であり、厄除け大師として、関東では、佐野厄除け大師や川越の喜多院が知られている。魔除けの護符として「角(つの)大師」などがあり、2本のツノをもち、骨と皮に痩せさらばえた奇妙な像は、良源が夜叉の姿に化して疫病神を追い払った時の姿であるという。この護符を玄関先などに貼っておくと魔除けになるという。

また、元三大師は、おみくじの創始者といわれ、いまでも「元三大師おみくじ」が引かれている。ここ深大寺のおみくじは、凶が多いことで有名。しかし「凶」を引いたからといって悪いわけではなく、「吉」に好転する力を秘めている、とされるそうだ。 では、深大寺の元三大師おみくじを引いて、「大吉」がでたら、どうなるのだろうか。まさか、「凶」に転ずるということはないだろうが。

深沙堂

深沙堂・扁額

元三大師おみくじ

角大師

角大師・川越喜多院の護符

3.深大寺の釈迦如来倚像の不思議?

深大寺には、釈迦堂に釈迦如来倚像が安置されている。白鳳時代のものとされ、2017年に国宝に指定された。倚像というのは、倚子に腰をかけた姿を指し、仏像では坐像のほうが多く、こうした姿は珍しい。 その作風から、法隆寺の夢違観音や新薬師寺の香薬師(こうやくし)と同じ工房で鋳造された可能性があるとされている。(なお、新薬師寺の香薬師は、盗難に遭い現在所在が不明となっている。)

たしかに、この仏像を奈良の寺院で見るならば違和感は持たないが、なぜ関東の深大寺にあるのだろうか、しかも寺の創建(天平期)よりも前の時期である白鳳期に造られた仏像があるのか。次のような推測がなされている。

一つは、寺の宗派の観点から、深大寺はいまは天台宗であるが、かっては、興福寺などと同じ法相宗であったことから、畿内とのつながりが推測される。像の優れた造形や高度な 鋳造技法から、また夢違観音や香薬師との類似から、深大寺の開創より前に文化の中心であった畿内地域で製作され、その後、深大寺の本尊として迎えられたとも考えられている。

もう一つは、深大寺の開基である満功上人と朝鮮からの渡来人、福信という人物との関わりの観点から、当時武蔵国の国司として出世した、高句麗からの渡来人であった福信という人物がおり、深大寺の創建に当たって、開基である満功上人との関わりから、この仏像を本尊としてもってきたという説があるようだ。

この仏像については、記録がほとんどなく、伝来ははっきりしないが、明治42年(1909)に元三大師堂の須弥壇下から発見されたという。

先に述べたように、極めてすぐれた白鳳仏ということで、土門拳の『古寺巡礼』にも撮り上げられており、先日の東京都写真美術館での写真展でも土門拳の美の追求の一枚として展示されていた。(東京異空間102:仏像写真と美人画2023/4/19

いずれにしても、古代の畿内と関東の文化交流を、この仏像が物語っていて、その美しさとともに、観る者に歴史のロマンと美の感動を与えてくれているようだ。

釈迦如来倚像(ウィキペディアより)

新薬師寺・香薬師(ウィキペディアより)

4.鬼太郎茶屋の不思議?

深大寺の門前には、そば屋が多く並び、「深大寺そば」として知られている。古くからそばの産地として知られていたようだ。古代に武蔵野台地を開拓した朝鮮からの渡来人によるという話もある。江戸時代には、土地が米の生産に向かなかったため、そばを作って深大寺に献上し、それを寺側が蕎麦として打ち来客をもてなしたという。三代将軍・家光が鷹狩りの際に深大寺に立ち寄り、その蕎麦を食べ褒めたという。このあたりの国分寺崖線(ハケ)による良質な湧き水が蕎麦の名所を支えたそうだ。

いまでは、門前に20数軒のそば屋が並んでいる。しかし、神代植物園の敷地としてそば畑は姿を消し、いまでは地元のそばは使われていないという。

そば屋が並ぶ通りの端に、鬼太郎の人形などが置かれている「鬼太郎茶屋」がある。ゲゲゲの鬼太郎の作者、水木しげるが、ここ調布市に住んでいたことから、ここに店を構えたという。数年前、NHK朝ドラで「ゲゲゲの女房」が放送され、この辺りもドラマに使われたことから人気を博したが、いまでは外国人も多く訪れる場所となっているようだ。

古代には、渡来人がやってきてそばを作り、そして今では外国人観光客がやってきてそばを食べと、このエリアも不思議いっぱいの妖怪ゲゲゲ・ワールドになっているのかもしれない。

鬼太郎茶屋

鬼太郎茶屋

鬼太郎茶屋

深大寺を訪れ、ここにいくつかの「ふしぎ発見」をしました。もうひとつ、本堂の近くにナンジャモンジャの花が咲いていました。ナンジャモンジャというのは、今で言えば「ナニコレ」という感じでしょうか。見慣れない立派な木、珍木、怪木などに地元の人々が名付けた愛称です。樹種としては、ヒトツバタゴを指すことが多いようですが、ボダイジュやクスノキなど他の木の場合もあるようです。境内に大きなナンジャモンジャの木があり、雪のような白い花を見事につけていました。これもまた、不思議の一つだと思い、深大寺を後にしました。

ナンジャモンジャの木

雪のような白い花

ナンジャモンジャの花



2023年4月23日日曜日

東京異空間104:初夏の花図鑑~神代植物公園

神代植物園「つつじ園」

練馬の「平成つつじ公園」、根津神社の「つつじ園」と<つつじ>続きで、調布市にある神代植物園の「つつじ園」を訪れました。

さすが「植物園」ということだけあって、つつじのみならず、シャクナゲ、ボタン、フジなどが見ごろでした。また、大温室では熱帯の植物の数々を観ることが出来ました。

1.ツツジ

広大な敷地にクルメツツジ、リュウキュウツツジなど約280種類、12、000株が植えられているという規模の大きいつつじ園である。この時期はつつじウィークということで、360度パノラマで一望できるよう見晴台が設置されていた。

一面つつじでおおわれているが、ここにもクルメツツジの「老の目覚」を見つけた。練馬、根津と3カ所で見たことになり、よく見る品種なのだろう。ひょっとすると、「老の自覚」という品種もあるかもしれない、いや、新品種として出来るかもしれない(?)。

つつじ園

一面のつつじ

池の向こうに彫刻

つつじ園

つつじ園

リュウキュウツツジ「東白」




クルメツツジ「老の目覚」

早くもトンボが

2.シャクナゲ

つつじ園に続いて、シャクナゲ園に入るシャクナゲもツツジ科で、この植物園は、こうした同種類をまとめてエリアを形作っている。シャクナゲは、つつじに比べると形も色も派手な花、豪華に見える。ここには、西洋シャクナゲを中心に32品種が植栽されていて、このエリアを華やかに彩っている。

シャクナゲ





3.ボタン

続いて、ボタン園になる。ボタンは、ボタン科で、ツツジ科ではないが、花はシャクナゲよりもさらに豪華で派手である。この「ぼたん園」には、100品種・約480株のボタンが植栽されていて、今がちょうど満開の時期となっていた。

「立てば芍薬、座れば牡丹」と美人を形容する決まり文句があるが、たしかに、牡丹は花の中でも豪華で美しい。








ハンカチの木?

4.フジ

豪華で美しいボタンの次は、ふじ園である。ここには、長さ100m近くもある藤棚が作られている。濃い紫、淡くやや黄色がかった白、そして薄い紫と、花色のグラデーションが目を喜ばせてくれる。(というより、レンズを通して楽しむことができる。)

藤棚











5.大温室の花

大温室には、熱帯性の植物を中心に、約1300品種もの変わった、また美しい花々が育てられている。

(1)熱帯花木

温室を入って、最初のコーナー「熱帯花木室」には、食虫植物のウツボカヅラが、丸く膨らんだ捕虫袋を下げている。その横には、真っ赤な大きな花を付けたメディニラという植物、「火の鳥」と名付けられている。プレートには「ノボタン科」とある。少し先には、大きく垂れ下がった花、エンジェルトランペットとも呼ばれるナス科の植物。

なかでも上からぶら下がった植物では「ヒスイカズラ」という翡翠色した花が連なっている。横には、その花を水盤に浮かべて、色の鮮やかさを楽しませてくれている。このエリアでは「カズラ」とつく名を見かけるが、カズラとは、つる性の植物をいう。古くは、つる草を髪に結んだり、巻きつけたりして頭の飾り「鬘(かずら」としたことに由来するという。

キツネノマゴ

ウツボカズラ

メディニラ「火の鳥」

エンジェルトランペット

ノボタン

ジャックフルーツ・世界最大の果実


ホザキアサガオ

ヒスイカズラ

ヒスイカズラ

ヒスイカズラを水盤に浮かべて

(2)ラン

つぎは、ラン室。ランは、その花の美しさもあり、愛好家も多い。ファレノプシスは胡蝶蘭とも呼ばれ、贈り物にもなることも多い。鑑賞するには好まれるが、しかし素人がいざ育てるとなると、なかなか難しいのもランの特徴だろう。







(3)ベゴニア

続いて、ベゴニア室。ベゴニアも種類が多く、とくに花の美しいものは、「花ベゴニア」と呼ばれるそうだ。大きくて派手な花はボタンに近い。色鮮やかな大きな花のベゴニアを水に浮かべて、一層美しさを増す演出をしていた。







ベゴニアの花を水に浮かべて

(4)スイレン

スイレン室には、熱帯性のスイレンが何種類もあり、それぞれ紫、ピンク、黄色、白色など、清楚で美しい花を水面に浮かべていた。スイレンとハスは、漢字で書くと「睡蓮」と「蓮」で、どちらも「蓮」が付くので混同しやすいが、水面近くに咲くのがスイレン、水面より上のほうで咲くのがハス、葉も水面に浮かべているのがスイレンで、水面より上へ立ち上がっているのがハスである。

ここにある熱帯スイレンは、水面から10数センチ立ち上がって花を付けるのが特徴のようだ。どちらにしても、清楚で美しい花をつけ、見ていて吸い込まれるようだ。


















(5)サボテン

「乾燥地植物室」では、多くのサボテンを観ることができる。サボテンは、雨の少ない乾燥地帯に育つことから、部屋での鑑賞、栽培をする愛好家も多いようだ。

キンシャチ(金鯱)






6.緑の雑木林

神代植物園は、武蔵野の古刹として知られる深大寺の裏山にあたる林に位置する。多くの色鮮やかな花々を見てきた後に、自然林のように緑豊かな場所は、心が落ちつく。まさに森林浴という感じだ。よくみると、エビネのかわいい花が咲いていた。

アヤメ




エビネ

エビネ




つつじを追いかけて(?)神代植物園にやってきましたが、ここでは、同じ種類の植物を一つに集め、さまざまな品種を次々に楽しむことができます。今回見てきた「つつじ園」などのほかにも、30ブロックに分けられており、5月に入ると、「バラ園」が見ごろになるようです。

桜、つつじ、の次はバラの追っかけでしょうか。また、訪れたい所です。もちろん、花の写真を撮るには絶好の場所です。

東京異空間200:キリスト教交流史@東洋文庫

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