2019年12月20日金曜日

上野の建築(家)と彫刻(家)めぐる

東京国立博物館・本館

上野公園では、寛永寺の堂宇のほかにも、美術館など多くの歴史的建物、また彫像を見ることができます。これらから建築家、彫像家のすがたを垣間見てみたいと思います。

東京国立博物館には、本館、表慶館、東洋館、法隆寺宝物館、平成館、黒田記念館などの建物がある。
本館

本館

本館は、現在は2代目であり、初代はジョサイア・コンドルの設計による赤レンガ造りで印度・イスラム様式の小塔を乗せた建物であったが、関東大震災により大きな被害受けてしまった。現在の建物は、渡辺仁による設計で、帝冠様式(洋風の建物に和風の瓦屋根をのせた和洋折衷の建築様式)の代表的な建築であるといわれている。渡辺仁は、銀座・和光なども手がけている。帝冠様式を好んで造った建築家には伊東忠太がいる。

表慶館

表慶館は、明治33年(1900年)、皇太子(のちの大正天皇)のご成婚を記念して計画され、設計は片山東熊による。片山東熊は、ジョサイア・コンドルの弟子で、宮廷建築として、現在の迎賓館赤坂離宮(国宝)が代表作だが、ほかに京都、奈良の国立博物館なども手がけている。明治期の日本の建築家第一期として、同期には日銀、東京駅を設計した辰野金吾がいる。

東洋館

東洋館は、東洋美術の所蔵品を展示するため、昭和43年(1968年)に谷口吉郎の設計により建てられた。谷口吉郎は、竹橋の東京近代美術館、ホテルオークラ旧館なども手がけており、昭和期のモダニズム建築を推進した。

法隆寺宝物館

法隆寺宝物館は、保存と展示を両立させる施設として、平成11年(1999年)に開館した。設計は谷口吉生による。東洋館の谷口吉郎は父であり、トーハクで親子競演となった。谷口吉生は、ニューヨーク近代美術館(新館)などを手がけており、美術館建築の名手といわれる。

黒田記念館

黒田記念館は、黒田清輝の遺産の一部を使い帝国美術院付属美術研究所として、昭和5年(1930年)に開所した。東京美術学校教授であった岡本信一郎の設計で、昭和初期の美術館建築として貴重なものとなっている。

国際子ども図書館

国際子ども図書館は、旧帝国図書館がその前身であり、ルネサンス様式を取り入れた明治期洋風建築を代表する建物のひとつである。設計は久留正道で、やはりコンドルの元に学んだ工部大学校3期生である。京都大学吉田寮、旧第五高等中学校(熊本大学五高記念館)など文部省管轄の建物を手がけている。
なお、国際子ども図書館に転用されるにあたり、安藤忠雄の設計により改修が行われ平成14年(2002年)にオープンした。

奏楽堂

旧東京音楽学校奏楽堂は、同じく久留正道が山口半六(文部技官)とともに設計し、明治23年(1890年)に建てられた日本で最初の西洋式音楽ホールとされる。

東京芸術大学陳列館

旧東京美術学校陳列館は、黒田記念館と同じく岡本信一郎の設計によるもので、スクラッチタイルで覆われた外観で、昭和4年(1929年)に建てられた。

東京都美術館

東京都美術館は、大正15年(1926年)に日本で最初の公立美術館「東京府美術館」として建てられた。この時の設計は岡本信一郎によるもので、さきの黒田記念館、東京美術学校陳列館とともに日本の美術施設のさきがけをなし、上野公園内に「美の殿堂」をつくりあげた。
現在の東京都美術館は、昭和50年(1975年)に建て替えられた。設計は前川國男で、彼は日本モダニズム建築の巨匠といわれる。

国立西洋美術館

国立西洋美術館は、松方コレクションを展示するため、ル・コルビジェの設計により建てられた。当初、文部省は表慶館を展示場に充てようとしたが、フランス政府が不快感を示し、松方コレクション専用の新たな美術館を建設するよう日本政府に要求した。その後、ル・コルビジェ自身が来日し、建設予定地を視察し設計したという。実施設計は弟子の前川國男らによって行われ、昭和34年(1959年)に設立された。

東京市民文化会館

東京市民文化会館

東京文化会館は、コルビジェの弟子である前川國男の設計により、東京都開都500年祭の記念事業として昭和36年(1961年)につくられた。西洋美術館のル・コルビジェの設計案には本館のほか、講堂、図書館の入る付属棟、劇場ホール棟が含まれていたが、財政難のため付属棟と劇場ホールの建設は見送られた。この文化会館はその形を変え、弟子の前川國男によって実現されたといえる。

地獄門


地獄門



カレーの市民

カレーの市民

国立西洋美術館の前庭には、ロダンの地獄門、カレーの市民、考える人などが置かれている。あまりにも有名なこれらの彫刻、屋外に置かれているからか、これはレプリカではないか、と「考える人」もいるという。もちろん、オリジナルの本物である。
ホンモノかなぁ?


西郷さん

「ツン」

上野公園といえば、この西郷隆盛の銅像。明治期の有名な彫刻家高村光雲によって作られた。西郷の死後21年後の明治31年(1898年)に立てられた。ところで、西郷が引いている犬の名前はご存知?「ツン」という名で、こちらは高村光雲ではなく、後藤貞行という人の作品だそうだ。

上野大仏

上野大仏は、もともとは像高6mの釈迦如来坐像であった。関東大震災など度重なる罹災により損壊し、胴体は戦時の金属供出で失われてしまい、いまは顔面のレリーフのみが残されている。
胴体を失った顔面は「これ以上は落ちない」ということから、「合格大仏」として受験生などに祈願されるという。

上野公園にある美術館でいろいろな芸術作品に触れることもいいが、屋外で見られるこれらの名建築、名彫刻を見て回るのも、また芸術に触れるいい時間となります。

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