散歩をしていると、いろいろな生垣に出会います。屋敷林のある家の生垣、畑のある農家の生垣、植木屋さんの生垣、住宅の生垣などをカメラに収めてみました。
1.屋敷林のある家の生垣
樹齢を重ねた大きな樹が何本も囲んでいる屋敷林の家の周りにある生垣。門を形作っている生垣、そこから両脇に伸びる生垣は、歩いたら100歩近くあるだろうか、きれいに刈り込まれていて見事である。
生垣に使われている樹はヒイラギ。葉が鋸状になっていて、節分のときにヒイラギの枝に鰯の頭をさして門戸に飾ると邪気を払うといわれるように、邪気の侵入を防ぐということから生垣にもよく使われている。
なお、老樹になると、この葉のトゲは少なくなり縁は丸くなってくるという。
2.畑のある農家の生垣
畑の周りを囲む生垣も長く伸びていて見事である。この農家の畑の生垣には、イヌツゲが使われている。家の前の生垣は、やはりヒイラギが使われている。
この辺りには、武蔵野面影をちょっぴり残す雑木林が残されているが、畑の向こうにはマンション、住宅地が広がっている。生垣の向こうに柿の木がみえたり、長く続く生垣の道、ゆったり歩くにはいい道である。
これほど、広い畑ではないが、近くにはいろいろな畑があり、それを囲む生垣には、トキワマンサクが使われていたりする。漢字で書くと「常盤満作」、やはり畑の生垣にぴったりの樹なのだろう。
ここは植木屋さんの敷地、さすがに立派な門かぶりのマキの樹。さらに奥にはチャボヒバの団子のようなかたまりを作っている樹がある。この作りを「玉ちらし」というそうだ。
道路に面した生垣には、サンゴジュが使われている。サンゴのような赤い実と付けるこの樹は、防火、防風、防音の機能を持った樹で、高さもあり、広い敷地を囲むのには適しているのだろう。
もう一軒の植木屋さんの生垣には斑入りのサカキだろうか、いつも美しく刈り込まれている。
4.住宅の生垣
住宅の生垣も、色々な樹種が使われている。よく見かけるのはベニカナメモチ(レッドロビン)、新芽が鮮やかな赤になる。
他にもカイヅカイブキを使った生垣、足下にはサツキが植えられている。シラカシを使った生垣もある。高くなる樹でもあり、目隠しにはいい。
樹種がわからないものもあるが、手入れがなされた見事な生垣がある。ちょっとモダンな生垣?も見つけた。
一戸建ての住宅では、ブロックやフェンスで囲い、生垣を作るのは少なくなっているようです。
生垣の歴史を調べてみると、今見るような刈込みした生垣は、江戸時代中期から始まったとされ、それ以前は垣根として自然樹形に近いかたちで生きた樹木を植えた生垣だったようです。
江戸時代後期の日本に滞在した二人のイギリス人が日本の生垣について述べているのを引用しておきます。
ロバート・フォーチュン『江戸と北京』
「ときどき種々の種類の常緑のカシや、時にはスギやほかの常緑樹でつくられた見事な生垣に注目した。生垣は丁寧に刈り込まれて、手入れがゆきとどき、時にはかなりの高さに整枝されて、イギリスの貴族の庭園や公園でよく見かけるヒイラギやイチイの高い生垣を思い出させる。」
ラザフォード・オールコック『大君の都』
「よく手入れされた背の高い生垣や垣根は、また厚くおおわれており,オランダ式造園法(これが日本からヨーロッパへ紹介された流行であることはほぼ確実だ)で刈り込まれている。その植え方や刈りこみ方は、称賛にあたいする。イギリス以外では、ど こにもこのような生垣はみられないし、イギリスにおいてさえもこのような変化は見いだしえない。」
(参考)飛田範夫「日本の生垣の歴史的変遷について」
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