2020年12月22日火曜日

湖の国の旅5:湖南三山と京都タワー

湖の国の旅の最終日、5日目は、湖南三山といわれる、善水寺・長寿寺・常楽寺を周り、京都に出て、京都タワーに上り、新幹線で帰ってきた。

善水寺

長寿寺

常楽寺


1.善水寺

近江八幡駅から草津で草津線に乗り換え甲西駅まで行く。そこからバスで岩根バス停へ。

善水寺は岩根山の中腹にあり、急勾配の参道を10分ほど登ると観音堂があり、丈六の聖観音をまつる。さらに登ると、本堂と元三大師堂がある。

本堂は国宝となっている。内陣には御本尊・薬師如来(秘仏)をまつる厨子、金剛力士像、四天王、梵天、帝釈天、十二神将、僧形文殊坐像など多くの仏像が安置されている。

寺伝では、奈良時代に元明天皇が国家鎮護のため建立し、その後、平安時代に桓武天皇が病気になった際、最澄が寺の霊水を献上したところ、たちどころに平癒したことから、天皇から岩根山・善水寺の寺号を賜ったという。

 

本堂にある仏像の一部、毘沙門天、不動明王、僧形文殊菩薩の3像をポストカードから転載しておく。いずれも平安時代のもので、とくに僧形文殊菩薩は、文殊菩薩の生まれ変わりの僧・伝教大師(最澄)をあらわし、あまり見ることがないお像だ。

 

お堂の出口に「近江茶」の試供品が置かれていて、お持ちくださいとあったので頂いてきた。また、お寺の前の広場に出店が出ていて、地元の採れた野菜などを販売していた。カメラをブラ下げていたからか、地元の方が紅葉のいいスポットがあると案内してくれた。紅葉の間から遠くに町が眺められる場所だ。

甲西駅

岩根バス停近くの家


善水寺・観音堂

聖観音

善水寺・本堂と元三大師堂

善水寺・本堂

善水寺・本堂





善水寺・本堂

善水寺・本堂

善水寺・元三大師堂

善水

善水寺からの眺め



善水寺・参道

毘沙門天像・菩薩が肩車?

不動明王像

僧形文殊菩薩像

 

2.長寿寺

甲西駅から石部駅に行く、駅前には石部宿の門が造られている。そこからバスで、長寿寺へ。

奈良時代に良弁によって開かれたと伝えられる。寺伝では聖武天皇が僧・良弁に子宝を祈願させたところ、皇女(のちの孝謙天皇)が誕生した。天皇は、子供の長寿の願いと、紫香楽宮の鬼門封じとして伽藍を建立し、「長寿寺」と名付けた。さらに僧・行基に子安地蔵を刻ませ、本尊としたという。

 

参道の両側は紅葉の並木となっていて、モミジの葉の赤い絨毯を歩くようだ。途中、道は二股に分かれるようになっていて、左側に行くと「白山神社」、右に行くと長寿寺の本堂に出る。本堂は、平安時代に再建されたもので檜皮葺の屋根をもち、国宝となっている。

御本尊の子安地蔵菩薩は秘仏だが、阿弥陀如来、釈迦如来、丈六の阿弥陀如来などが安置されている。

 

内陣の隅で、住職さんがお軸を説明されている。お話を伺うと、これは「地蔵曼荼羅(レプリカ)」で、本物の修復のための寄付を集めているという。曼荼羅というと、空海がもたらした金剛界・胎蔵界曼荼羅が密教の世界観を表わしているというのが一般的で、地蔵曼荼羅というのは聞いたことがない。しかも中心に描かれている地蔵菩薩は、如意輪観音のように六臂6本の腕)だが、一対は頭の上で結んでいるという姿は、まず、どんな仏像にもない形だろう。さらに周囲には指先ほどの小さな地蔵が、集合写真のように整然と並び、1万1851体もあるという。

 

この地蔵曼荼羅については、朝日新聞の記事になっていて、調査した学芸員の話として、作風から室町時代に制作されたもので、姿の六臂は「六道」と関係しているとみられるという。六道とは人が死後、輪廻(りんね)を繰り返す六つの世界で、地獄もその一つ。地蔵は六道に迷う人々の苦しみを断つとされ、「六地蔵」の信仰もある。また周囲の1万以上もある小さな地蔵については、「地蔵の無限の願いと無数の分身」を表現したとみられるという。

いずれにしても、極めて異形な曼荼羅図で非常に珍しいものである。これが見られたことだけでも驚きであった。

パンフレットから地蔵曼荼羅(一部)を転載しておく。

地蔵曼荼羅図

 

本堂から左に回ると、白山神社の社があり、近くの高台には「三重塔跡」の看板がある。かってはこの寺にも三重塔があったが、織田信長が安土に城を築き、摠見寺を建立した際に移築してしまったという。

 

白山神社から門へ戻る参道は、モミジが一段と覆っていて美しい。長寿寺からバスで西寺のバス停へ。長寿寺を東寺、西寺を常楽寺という。

石部駅

石部宿の門

皇帝ダリア・長寿寺近くで

長寿寺・山門

長寿寺・参道


参道:右・本堂へ、左・白山神社へ

参道:右・本堂へ、左・白山神社へ


黄蝶が

手水

本堂


マユミの実が

本堂前に皇帝ダリア

三重塔跡

白山神社








輪粧:寺社が支配した荘園の地域(輪の中)を示す

 

3.常楽寺

長寿寺を東寺(ひがしでら)、こちら常楽寺を西寺(にしでら)と呼んでいる。どちらも似たような寺伝を持つ。常楽寺は、奈良時代、元明天皇の勅願により僧・良弁によって開基された。長寿寺と同様、紫香楽宮の鬼門封じとして建立された。

このように良弁の開基とする寺伝を持つ寺もこの石部辺りには多いようだ。またどちらも阿星山の号を持つが、阿星山は山そのものが山岳修行の場であったという。

御本尊は、千手観音像(秘仏)で、二十八部衆に囲まれる。

 

本堂の横には、室町時代に建立された三重塔(国宝)が建つ。内部に装飾等が施されていたというが、近年、無住時に荒れ、今は内部を見ることはできない。

長寿寺の三重塔は、信長によって安土に移築されたが、常楽寺は三重塔は残るものの、仁王門は秀吉により伏見城へ、さらに家康によって園城寺(三井寺)へ再び移築されたという。

 

三重塔と本堂の裏側にある高台には、西国三十三所巡りができるように、各寺の観音石仏が並んでいる。

 

お寺を辞して、西寺バス停の前に出るとまわりは、稲刈りの済んだ田んぼ、土手にはススキが生え、のどかな風景で、ゆったりとした時間があった。(もちろん、バスは1時間に1本しかないのだが)


常楽寺・三重塔

常楽寺・本堂と三重塔


常楽寺・本堂

常楽寺・本堂と三重塔





西国三十三所の観音石仏と三重塔



常楽寺・本堂

常楽寺付近の風景

常楽寺付近の風景


西寺バス停付近

 

4.京都タワー

京都駅に出て、少し時間があるので京都タワーに行った。京都には、何度も来て、駅前のこのタワーを毎回見ているが、タワーに上るのは初めてである。

 

タワーから京都市街をぐるっと360度見ることができる。手前には東本願寺の大きな屋根、平安神宮の奥には比叡山が聳える、知恩院から八坂の塔辺りが見える、京都国立博物館の奥には智積院、手前に長い建物は三十三間堂、遠くに赤く見える建物は清水寺だ。東山の中腹にあるのがよく分かる、東寺の五重塔の遠く向こうにはあべのハルカスまで見える。

 

タワーを出て、帰りの新幹線で食べようとお弁当を買って乗り込んだ。


東本願寺

東本願寺

平安神宮の鳥居と比叡山

知恩院、祇園閣(伊東忠太の設計)

清水寺

八坂の塔

京都国立博物館、智積院

三十三間堂

清水寺

東寺の塔とあべのハルカス

東寺・五重塔

あべのハルカス


駅ビルの映る京都タワー

 

5.ふりかえり

湖南三山は、湖東三山の向こうを張って観光にも力を入れているようだ。湖南三山の観光パンフレットには、お寺の拝観料の割引券が付いている。ということで、事前に観光案内所でパンフレットをしっかりゲットしてきた。


湖東三山の本堂、三重塔などの建物は国宝となっており、多くの仏像も安置されていて見ごたえがある。ただ、通常時は拝観には事前の予約が必要とのこと。またどうしても足が不便で、訪れるにはしっかりとバスの時刻などをチェックして、その時間までには拝観を終え戻らなくてはいけない。でも、そのため逆に訪れる団体客などはいなく、じっくりと見て回ることができた。

 

今回の旅では湖の国を、湖東・湖北・湖南とまわり、それぞれの寺院、神社、仏像、城、町並み、屋敷、庭園を見てきた。紅葉シーズンで一層美しく、それぞれのところで歴史に触れることができた。そして食べ物も、近江牛はもちろんのこと、焼鯖そうめん、あかこんにゃく、湖産のエビの佃煮なども美味しかった。


京都、奈良といった古都は何度か来ているが、ここ滋賀も奥深いところだ。国宝や重文といった文化財保有の数では京都・奈良に次いで4番目だという。1番は博物館などが多い東京。まだまだ訪れてみたい寺院や、仏像など、たくさんある。できれば今回は行けなかった湖西も。

 

お寺だけでも、旅の初日に訪れたのは、西国三十三所・三十一番札所の「長命」寺で、その後もたくさんの寺を訪ね、最終日には湖南三山の「善水」寺・「長寿」寺・「常楽」寺と、縁起の良い名前の寺をめぐった。そこで、こんなことを想った。

 

「長命」を願い、もしも病を得てしまったら「善水」で平癒して、健康で「長寿」に、「常に楽しく」過ごせたらという祈りを込めて。

 

湖の国、またいつか訪ねたいという思いを強くし、新幹線は、伊吹山の麓を通り過ぎ、帰宅した。

長寿寺・参道にて

新幹線上り・京都タワーから






 

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