2022年6月6日月曜日

東京異空間65:中野・成願寺の仏たち

竜宮城のような山門

先に「二つの写真展を観た」で写大~土門拳をアップしましたが、その時に地下鉄中野坂上駅を降り、山手通りを歩くと、竜宮城のようなお寺の門がありました。写大の帰りに、このお寺・成願寺に寄ってみました。

境内には、地蔵菩薩、十六羅漢などの仏像もたくさん置かれていました。新宿の高層ビルも近いこの辺りに、こんな異空間があったのか、とはじめて知りました。

 

1.成願寺の境内

(1)成願寺の伝承

成願寺の始まりについては、寺の案内パンフレットに次のような伝承が書かれている。

今から600年ほど前に、この地に鈴木久郎という人が田畑を耕し、雑木林を拓き馬を育てていたが、さっぱりうだつがあがらなかった。ある日、馬を売りに千葉の方の馬市へ行く道すがら、浅草の観音様に寄り、「馬がよい値で売れますように、馬が売れてそのお金の中に大観通宝が入っていたら、それは全部観音様に納めます」という願いをした。当時、宋で鋳造された大観通宝は、ごく稀少なお金であった。ところが、馬が高く売れ、その代金のすべてがその貨幣であった。九朗は観音様へ納めるといったことを後悔したが、約束は約束、守らねばならないと決心し、残らず賽銭箱に納めてきた。それから九朗は今まで以上に働き、財を成し「中野長者」と呼ばれるようになり、熊野十二社の神様を勧請した。(西新宿にある十二社熊野神社)

しかし、不幸が訪れ、十八になる一人娘小笹が急逝した。九朗は、娘の冥福を願い、自らが得度し、十二社の池の畔にお堂を設け、娘の戒名からとって「正観寺」と名付けた。これが後に改称して成願寺となったという。

成願寺・山門

成願寺・山門

成願寺境内

中野長者・鈴木九朗の墓地

(2)本堂(法堂)・香炉堂

成願寺は、曹洞宗のお寺で、本尊は釈迦如来である。

本堂の前にある香炉堂は、総檜造りで、屋根には伝承に出てくる「大観通宝」の瓦がのる。内部は十二支の彫刻が施されている。棟梁・吉田武雄、彫刻家・関有雅により、平成8年に完成した。

本堂(法堂)

香炉堂

香炉堂

香炉堂・屋根に「大観通宝」の瓦

十二支の彫刻

棟梁・吉田武雄の名

(3)龍鳳閣(開山堂)

開山・川庵宗鼎の像の両脇に曹洞宗の祖とする道元禅師と瑩山禅師を祀っている。開山像胎内には開基・九朗と小笹のお骨の一部が収められているという。

龍鳳閣(開山堂)

道元禅師像

瑩山禅師像

(4)圓通閣(百観音堂)

伝承にもあるように観音様との縁が深いことから、西国三十三ケ所、板東三十三ケ所、秩父三十四ケ所のあわせて100の観音霊場と同じ観音様が安置し、江戸期には百観音霊場として信仰を集めた。

圓通閣(百観音堂)

聖観音菩薩像

百観音

(5)防空壕

29の空襲により、堂宇、仏像が全焼した。当時使われた防空壕が境内の隅に残っている。1945年5月25日の山の手大空襲といわれる際には多くの人がこの防空壕に避難したという。

 

2.成願寺の仏たち

成願寺の境内には、様々な仏たちが置かれている。中でも、ちょっと珍しい石仏や、見事な銅像などが目を引いた。

(1)六地蔵菩薩

山門の脇にも大きな地蔵菩薩像があるが、山門を入ったところには屋根を付けた六地蔵菩薩像が置かれている。六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)を輪廻する人々を地蔵菩薩は旅の僧の姿で守護するとされる。

山門脇の地蔵菩薩像

六地蔵菩薩像

(2)馬頭観音

境内には大きな馬頭観音像が置かれている。これほどの立派な馬頭観音が置かれているのは初めて見た。

他にも、珍しい姿をした青面金剛(庚申塔)や、本堂横にも大きな銅像が立っている。これは、舜学義尭というこの寺の住職で、空襲で灰燼に帰した堂宇などの再建に尽力されたという。それにしても、日本の僧のイメージとは違うお姿である。


馬頭観音像

馬頭観音像

馬頭観音像

馬頭観音像・頭の上に馬頭

青面金剛(庚申塔)・腰についているのは猿か

舜学義尭像

(3)十六羅漢像

境内には、多くの羅漢像が置かれている。それぞれユニークなお顔、お姿をしており、これを観るだけでも楽しめる。

頭を掻くことも多いですね

いやぁー、困った!

掃除もしっかりして

寿司を握っているの?

横になって休みましょう

じいじの孫の子守

杖ついて、やっと・・・

明るく笑いましょう

毎日を明るく

知的に書も読み

何を撫でているの

友とともに

ひそひそ話?

重たいものは・・・

お恵みを

暑くなりましたねぇ

拍子木を叩いて始まり始まり

他にもいろいろな仏像が境内には置かれている。


この像も珍しい

如意輪観音など

如意輪観音など

水盤に水草の花が

水盤にメダカ

境内・左から百観音堂・開山堂・本堂・前に香炉堂
 

偶然訪ねた、この成願寺について、その歴史にふれ、境内の仏たちに出会えることができました。20年以上前になりますが、中野区に住んでいたこともあり、懐かしさだけでなく、新たな発見もできたように思います。

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