2022年6月24日金曜日

東京異空間67:行人坂・大圓寺

 

大圓寺・石仏群

目黒駅前から行人坂を下っていくと、途中に勢至観音を祀る祠と多くの石仏のある大圓寺があります。

目黒駅近くの聖アンセルモ教会を訪れた後、こちらは、仏教、石仏を中心とする聖なる空間が広がっていました。

  1. 勢至観音菩薩

行人坂を下ってすぐに勢至観音を祀る祠がある。行人坂は、さらに下ると、目黒雅叙園があり、太鼓橋を通り目黒川を渡ると目黒不動尊へ至る。行人坂の由来は出羽三山の一つ、湯殿山の行者が大日如来堂(現大円寺)を建て修行を始めたところ、次第に多くの行者が集まり、この坂を往来したことによるという。

祠に安置されている勢至菩薩は、両手を合唱し、片膝を立てて座っている。台座に銘文が刻まれていて、宝永元年(1704年)に*明王院の西運(さいうん)という僧が目黒不動と浅草観音に毎日参詣し、その途中、人々の浄財を集め、これをもとに目黒川の両岸に石壁を造り、石製の太鼓橋を架けたという。

祠の横に、小さな石仏が置かれている。頭の上の双髷が大きく、手には蓮華や宝珠などを持つ姿だが、何という仏かは分からない。

*明王院は、今の雅叙園の敷地にあったが、明治に廃寺となり、仏像などは大圓寺に移されされた。

*「八百屋お七」物語に登場するお七の恋人吉三は、後に西運上人となったとされる。

祠・勢至観音菩薩

勢至観音菩薩

勢至観音菩薩

手に蓮華、宝珠を持つ

  1. 石仏群

    行人坂の途中に大圓寺がある。大圓寺は、明和9年(1772年)に発生した江戸の三大火事の一つ明和の大火(行人坂大火とも)の*火元となった寺であることから、幕府より再建が認められず、嘉永元年(1848年)に薩摩藩島津家の菩提寺として、ようやく再建された。

    *僧による放火であったという。

    この明和9年の大火は、この寺から出た火が、折からの強風により、たちまち白金から神田、湯島、下谷、浅草までを焼き尽くす大火となった。江戸の庶民は明和9年を「めいわくの年」と読んでよくないことが起きるのではないかとうわさしていたが、それが的中してしまった。

    山門をくぐって左手にある石仏群は、この大火により犠牲となった人々の供養として造られたとされる。釈迦如来像を中心に、湾曲した壁面いっぱいに五百羅漢が並び、合わせて520躯ある石仏の姿は圧巻である。

大圓寺・山門

釈迦如来坐像

石仏群

石仏群

石仏群

石仏群
3.庚申塔
庚申塔境内の右手側に回ると、庚申塔が3基あり、このうち1基の三猿には陰部が彫られている。庚申信仰では、庚申の夜に男女の交わりをすると、大泥棒の子が生まれるといって、その行為を慎むように戒めている。この三猿も、そうした意味合いを込めて、あえて陰部を示しているのかもしれない。なお、すでに「東京異空間52:庚申塔~民間信仰を見る」でいくつかの庚申塔を見てきたが、こうした陰部がわかる三猿は初めて見る。
  1. 庚申塔


庚申塔

三猿(陰部)

縦に並ぶ三猿

  1. 地蔵菩薩

石仏群の前に「とろけ地蔵」といわれ、大火による高熱によって溶けてしまったような姿をした地蔵菩薩である。悩みをとろけさせ解消してくれるということで、信仰されているという。

ほかにも、身代わり地蔵や、今風のかわいい六地蔵が並んでいる。

とろけ地蔵

地蔵菩薩

六地蔵


  1. その他の石仏

さらに裏手に回ると、臼杵石仏の仏頭(レプリカ)が石の上に置かれている。本物の臼杵石仏はかっては仏頭が落ちていてユニークな形であったが、修復によって元の姿に戻されている(平成5年1993年)。土門拳の「古寺巡礼」でも落ちた仏頭の写真が撮られている。

境内には他にも、獅子の頭や、夫婦和合の道祖神、本堂の前には大黒天をはじめとする七福神の石仏があり、このお寺は石仏を見ているだけでも飽きない。

また、ご本尊は釈迦如来像であり、鎌倉初期に造られた清凉寺式の仏像で、やはり体内には綿などで作られた五臓六腑が収められているという。ただし、特定の日のみの開帳となっている。

臼杵石仏(レプリカ)

獅子

道祖神

七福神

大圓寺は、五百羅漢をはじめとする石仏群は、江戸の大火という歴史の一コマを語り、また江戸の人々の信仰の姿を垣間見せてくれるものでした。また、大黒天さまとして今も信仰を集めているようで、このときも参拝する人を見かけました。

私は5年ほど前にこのお寺を一度訪れたことがありますが、あらためて江戸の歴史的空間と、仏教の聖なる空間に浸ることができました。

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