「北欧の神秘」展@SOMPO美術館 |
新宿にあるSOMPO美術館で開催されている「北欧の神秘」展を観てきました(会期は6月9日まで。その後、松本市美術館などへ巡回)。
作品の一部は撮影可でした。
1.SOMPO美術館
新しくなったSOMPO美術館へは初めて来た。これまでは、損保ジャパン本社ビル内にあった美術館が、同じビルの敷地内に新たに建物を建て、2020年にSOMPO美術館として開館した。
この美術館は、1976年、損保ジャパン本社ビル42階に「東郷青児美術館」として開設された。よく知られているのは、ゴッホの《ひまわり》を所蔵していること。この絵は、約53億円で落札したことから注目を集めたが、落札当初、「贋作ではないか」という説が広がった。いまは、ゴッホ美術館の学芸員によって否定されている。
損保ジャパン本社ビル |
損保ジャパン本社ビル前のSOMPO美術館 |
SOMPO美術館 |
ゴッホ《ひまわり》 |
2.北欧の神秘
北欧の絵画というと、あのムンクを思い浮かべるくらいだろう。西洋美術史の本をひもといても、北欧の絵画というのはまず紹介されていない。今回、北欧三か国、ノルウェー(N)、スウェーデン(S)、フィンランド(F)の各国の国立美術館の所蔵品が展示されている。
展示の構成は次のようになっている。印象に残った作品をあげておく。
序章:神秘の源泉
19世紀、北欧諸国においてナショナリズムの高まりを背景に、北欧の自然、北欧の神話に着目した独自の芸術が生まれた。
ロベルト・ヴィルヘルム・エークマン 《イルマタル》1860 F |
ロベルト(1808-1873)はフィンランドの画家である。フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」を題材にした作品を多く描いた。フィンランドの美術の改革者とされている。
イルマタルとはフィンランド神話に登場する女神の名前であり、自然や創造の象徴とされている。
1章:自然の力
北欧独自の自然である森と湖、そして夏の白夜、冬の極夜などが作品の題材となる。
エドヴァルド・ムンク 《フィヨルドの冬》 1915 N |
ヴァイノ・ブロムステット《冬の日》1896年F |
アイリフ・ペッテシェン《夜景画》1887年 N |
アイリフ・ペッテシェン《夜景画》(部分)1887年 N |
2章:魔力の宿る森
北欧神話やフィンランドの『カレワラ』などから生まれた物語は、多くが森を舞台に魔法や呪いが出てくる。
(1)ガーラル・ムンテ
ガーラル・ムンテ(1849~1929) は、ノルウェー出身の画家。装飾美術にも関心を向け、ノルウェーの伝統的な民芸品からインスピレーションを得て、神話や民話をテーマとした水彩画を手がけ、そのデザインをタピスリーにも応用した。
『名誉を得し者オースムン』と呼ばれる北欧地域に伝わる英雄譚。オースムンは、王の命により、囚われの身となった姫を助け出すため、ひとり怪物・トロルの城へ。そしてトロルを倒し、財宝を手に入れ、姫と共に帰還する場面が描かれている。
(上段左から)ガーラル・ムンテ《山の門の前に立つオースムン》 / 《一の間》 / (下段左から)《五の間》/《帰還するオースムンと姫》 |
ガーラル・ムンテ 《帰還するオースムンと姫》 1902~1904 N |
ガーラル・ムンテ《一の間》(部分)1902-1904 年 N |
ガーラル・ムンテ《山の門の前に立つオースムン》1902-1904 年 N |
ガーラル・ムンテ《一の間》1902-1904 年 N |
ガーラル・ムンテ『山の中の神隠し』1928年 |
ガーラル・ムンテ『山の中の神隠し』(部分)1928年 |
ガーラル・ムンテ《スレイプニルにまたがるオーディンのタピスリー》1914年N |
(2)テオドール・キッテルセン
ノルウェーの画家テオドール・キッテルセン(1865~1947)は、自然の神秘的な側面に着目し、動物やトロル、妖精の登場する物語をイマジネーション豊かに描いた。
テオドール・キッテルセン《トロルのシラミ取りをする姫》 1900 N |
テオドール・キッテルセン《トロルのシラミ取りをする姫》(部分) 1900 N |
テオドール・キッテルセン《アスケラッドとオオカミ》1900 年 N |
テオドール・キッテルセン《アスケラッドと黄金の鳥》1900年N |
テオドール・キッテルセン《アスケラッドと黄金の鳥》(部分)1900年N |
これらの作品は、『ソリア・モリア城―アスケラッドの冒険』という絵本のために描いた12枚の挿絵の一部である。
また、展示室のコーナーには、テオドール・キッテルセンの作品に登場するトロルたちをアニメーション化した映像があり、細部まで描き込まれた繊細な作品の数々が大画面で鑑賞できる。これは、約8分間だが魅入ってしまった。
(3)その他
トルステン・ヴァサスティエルナ《ベニテングタケの陰に隠れる姫と蝶(《おとぎ話の姫》のためのスケッチ)》
アウグスト・マルムストゥルム 《フリチョフの誘惑》(部分) 『フリチョフ物語』より 1880s S |
アウグスト・マルムストゥルム 《フリチョフの誘惑》(部分・白い鳥) 『フリチョフ物語』より 1880s S |
3章:都市
北欧らしい薄闇の中の近代都市の神秘な光景、いっぽうで都市開発の陰で貧困や病など人々の生活を描く。
J.A.G.アッケ《金属の街の夏至祭》1859-1924年S |
この作品は、出品リストでは、2章に入っているが、幻想的な都市を描いているので、3章としておく。
北欧の絵画をまとまって観るのは初めてでした。それだけに新鮮で、印象深いものでした。また、会場では、絵画作品の展示に合わせて、描かれた世界をイメージした音の演出がされていました。絵画を「視覚」で楽しむことに加え、「聴覚」で体験するという体験は、美術館では初めてでした。
階段やエレベーターの扉などに妖精や魔物たちの絵が貼られていて、心を和ませてくれる演出でした。
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