2023年3月26日日曜日

東京異空間86:井の頭自然文化園2~彫刻園

 

長崎の平和祈念像(ウィキペディアより)

自然文化園の一角は「彫刻園」として、北村西望の彫刻が彫刻館の中に、また屋外にも置かれています。

北村西望といえば、長崎の平和祈念像を造った彫刻家としてよく知られています。この有名な像の制作にあたり、東京都の許可を得て自然文化園の敷地にアトリエを構えました。その後、多くの彫刻作品が寄贈され、ここに「彫刻園」がつくられました。

1.北村西望(1884-1987

北村西望は故郷の長崎から原爆記念碑の依頼を受け、戦前から住んでいた東京都北区から武蔵野市に転居し、井の頭公園内に、この巨大な男性像を作るため、東京都の許可を得て自然文化園の敷地をかりてアトリエを建てた(1953年)。

いまもアトリエは園内に残っており、その石膏の原型を観ることができる。古希を迎えていた北村はいくつも試作を重ね、5年かけて完成させ、1955年長崎の平和公園に設置された。

北村西望の平和祈念の言葉を抜粋しておく。

「あの悪夢のような戦争 身の毛もよだつ凄絶悲惨 肉親を人の子を かえり見るさえ堪えがたい眞情 誰が平和を祈らずにいられよう 茲に全世界平和運動の先駆として この平和祈念像が誕生した(中略) 右手は原爆を示し左は平和を 顔は戦争犠牲者の冥福を祈る 是人種を超越した人間・・・今や人類最高の希望の象徴」

平和祈念像の原型

アトリエ

2.西望の作品

北村西望の戦前の作品は、「山縣有朋元帥騎馬像」など勇壮な男性像でかつ戦意高揚を意図した作品を手掛けている。これらの作品は、彫刻館B館に展示されている。しかし、戦後になると、彫刻のモチーフは、平和、自由、宗教に変化し、そうした作品を多く制作した。これらの作品は、彫刻館Aとまた野外にも設置されている。

なお、西望が寄贈した作品は、約500点に及ぶものとなっている。これらの作品を館内で、また屋外で観ると、戦前の作品、そして戦後の作品をかさねて歴史を感じさせるものがある。

平和の女神(1969年)三鷹駅前にも設置されている

自由の女神(1959年)アメリカの自由の女神をモチーフにしている

花吹雪(1961年)

聖観世音菩薩(1937年)ブロンズ製

聖観世音菩薩(1975年)アルミニウム製

聖観世音菩薩(1975年)手前はガラス貼られたカラス

孔子像(1933年)

孔子像(1933年)

加藤清正公(1960年)

加藤清正公(1960年)

怪傑日蓮(1954年)

怪傑日蓮(1954年)上半身の筋肉は平和祈念像と同じ

人類の危機(1958年)核戦争への危機感を表した作品

人類の危機(1958年)

静座ー巨人(1925年)関東大震災の後、大地が揺れないよう不動の巨人像を制作

彫刻館前に置かれた彫刻群

彫刻館前に置かれた彫刻群

将軍の孫(1918年)西望の長男が軍靴を履いて敬礼する姿をモデルとした

「自然文化園」は、その名の通り、動物、植物などの自然と彫刻といった文化をあわせて観て楽しむことができる公園だと思います。これまでも何度か訪れてはいますが、これからも新緑や紅葉など、いい季節にまた訪れてみたいと思います。



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