マイケル・ケンナ展 |
二つの写真展を観てきました。ひとつは木村伊兵衛@東京写真美術館、もうひとつはマイケル・ケンナ@代官山ヒルサイドフォーラムです。木村伊兵衛については、あまりにも有名ですが、これだけまとまった写真展を観たのは初めてです。また、マイケル・ケンナは世界的に知られる写真家で、2018年には東京写真美術館で日本初の回顧展が開かれ、これも観に行った覚えがあります。
1.木村伊兵衛(1901-1974)
木村伊兵衛は「ライカの名手」といわれるように小型カメラを使ったスナップショット、ポートレート、ドキュメントなどの写真を撮った。戦後、土門拳とともにリアリズム写真において双璧をなす写真家である。
また、「ライカの神様」といわれるほど、ライカを愛用した。木村は、ライカレンズの持ち味を生かすためにF5.6以上には絞らず、基本的に開放のままで写すことを好み、「ライカのレンズは空気が写る」と言ったという。ニコンFの発表会に招かれた際の挨拶でも「私はライカがあればそれで充分です」と言って笑ったというエピソードもあるようだ。
今回展示されている写真を観ていて、タテ位置で撮った写真が結構多いなと気づいた。ポートレートなどの人物、街の様子や子供たちを撮った写真でもタテ位置のものが多いようだ。木村はライカを愛用しており、35mm小型カメラは普通に構えると横長になる。会場に置いてあった図録の写真集を見ると、タテ位置の写真のほうが大きく引き立って見えた。本は一般的には縦長だからタテ位置の写真のほうが際立つ。そこまで考えて写真を撮っていたのだろうか。
私自身は、どうしてもヨコ位置の写真が多くなり、それはパソコンにアップすると、画面が横長だから、そのほうが大きく、引き立つように見えるからだろうか、などと思ってしまった。
木村伊兵衛展 |
2.マイケル・ケンナ(1953-)
マイケル・ケンナ(Michael Kenna)は、アメリカ在住のイギリス人写真家。世界各地で個展を開き、また有名な美術館にも所蔵され、人気のある写真家である。
前回、東京写真美術館で開催された回顧展では風景写真以外に、原発や廃れゆく工場、さらにはナチスの強制収容所など社会的な写真も展示されていた。今回の展覧会では、北海道、京都、奈良、鎌倉、四国など、全国各地の日本の風景を撮影した作品が100点余り展示されている。
ケンナが使用しているカメラは中判のハッセルブラッドである。フィルムは、モノクロのKodakの「Tri-X 400ASA」を使用している。(このフィルムは私もその昔、カメラに夢中になったころ使っていた)。
したがって撮られた写真は、6×6の正方形のモノクロ写真となる。ケンナの独特の風景写真は、ときには夜と夜明けに10時間にもおよぶ長時間露光により作り出される。そのため、持って行く機材は、次のようなものだという。
ハッセルブラッドの中判カメラ2台、フィルムバック2台、ビューファインダー2台。1つはレンズを通して露出が測れるもの、1つは腰レベルのもの。40mm〜250mmの5本のレンズ。ほかにケーブルリリース、軽量のカーボンファイバーの三脚。夜用に手持ちの露出計。これらをアシスタントがいないことから自ら担いで行くという。
また、自らの手によるプリントで、仕上げる。これもモノクロであるからできる。
いまは、カメラもデジタルになっているが、ケンナは、これを使おうとはしない。それは、写真がリアリティとの接点を失ってしまうのではないかと思うからだという。
ケンナの写真は、どちらかというとプロの写真家好みで、アマチュアは真似しようにもできないだろう。
木村伊兵衛と、マイケル・ケンナを対比してみると、その道具、その被写体、撮り方などそれぞれ異なりますが、どちらの作品も観る者を惹きつけます。
木村伊兵衛@東京写真美術館は5月12日まで、マイケル・ケンナ@代官山ヒルサイドフォーラムは5月5日までです。
なお、木村伊兵衛展は写真撮影は不可ですが、マイケル・ケンナ展は撮影可です。
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