リュウキュウツツジ |
ツツジがきれいだということで、杉並区にある妙正寺公園に行ってみました。妙正寺公園は西武新宿線井荻駅から歩いて10分ちょっとのところにあります。数駅隣の駅ですが、初めて行きました。残念ながらツツジの見頃は過ぎていたようです。
公園の近くにある妙正寺にも寄ってみました。
1.妙正寺公園のつつじ
妙正寺公園は、妙正寺池を中心として周囲にツツジが植えられている。池は妙正寺川の源流となっている。しかし、現在では湧水量が減り、池の水は人工的に揚水している。噴水が造られている。公園としては1963年に開園した。
妙正寺池 |
噴水 |
ツツジは、江戸時代に九州に自生していたものを使って各地で品種改良が盛んに行われたことから九州の地名が付いている種類が多い。プレートにツツジの品種名が付いていたので、それに従って見ていく。
(1)リュウキュウツツジ(琉球躑躅)
江戸時代から栽培が始められた種類で、名前に「琉球」と付いているが沖縄との関係性は明確ではないという。リュウキュウツツジは半落葉低木で、大輪で白色の花を咲かせることが特徴。寒さに強いため、北海道などの寒い地域でも育てられる。
(2)ヤマツツジ(山躑躅)
ツツジの中でも代表的な種類で、日本原産で全国的に自生している。
(3)クルメツツジ(久留米躑躅)
久留米藩によって品種改良されたツツジで、ツツジの中でもたくさんの花を咲かせる。
(4)ゲンカイツツジ(玄海躑躅)
玄界灘に面した地域に多いので、この名がついた。岩場に多く生え、葉に先立って開花する。
(5)ヒラドツツジ(平戸躑躅)
平戸は、古くから交易の中心地であったことから、各地のツツジが持ち込まれ、寺院や武家屋敷内でそれらが自然交雑し、それらの中から特に美しいものを選抜し増殖した。白色やピンク色などの大きくて綺麗な花を数多く咲かせること、また丈夫な性質を持つ ことから、各地の庭園、公園、街路などに多数植栽されている。
(6)トコナツツツジ(常夏躑躅)
一つの株に白や赤の絞りやピンク、赤が混ざって花が咲く。クルメツツジの園芸種。
既に花は終わっていた |
2.妙正寺
公園の名の由来でもある日蓮宗の妙正寺。寺伝では、1352年、下総の国、中山法華経寺の日祐上人が池のほとりに堂を建て、法華経の守護である天照大神、八幡大神、春日大社など三十番神を勧進し奉ったのが始まりであるとされる。1649(慶安2)年、三代将軍徳川家光が鷹狩りの折、神前に武運長久を祈願し、葵の紋幕と朱印地五石を寄進してから、「御朱印寺」として有名になった。
(1)本堂
本堂は、1830(天保元)年に焼失したが、天保三年には再建され、1931(昭和6)年に改築され、現在に至っている。本堂には本尊のほか、安産に霊験ある鬼子母神像やかつて妙正寺池の弁天島(池に浮かぶ小島)にあった弁財天が祀られている。 鬼子母神像は、かつて江戸城大奥にあったが、天保の改革(1841)の大奥粛清の時、この寺に移され、以来この地域の人々に「安産の神」として親しまれてきた。
正門(山門) |
西門 |
西門参道 |
本堂 |
本堂の扁額 |
本堂の扁額 |
獅子鼻 |
獅子鼻 |
本堂 |
(2)鐘楼、三十番神堂
山門を入って右側にある三十番神堂及び鐘楼は、1856(安政3)年の大暴風で倒壊し、安政六年に再建された。現在の鐘楼は、前の鐘が戦時中に供出されたため、1963(昭和38)年に新しく建て替えられた。
三十番神とは、神仏習合の信仰で、毎日交替で国家や国民などを守護するとされた30柱の神々のことである。 三十番神は、法華経をはじめ、仏典に記された仏法による鎮護国家の考え方を前提とし、神仏習合の展開の中で日本の神々を取り込んで成立した。
鐘楼 |
鐘楼 |
三十番神堂 |
三十番神堂 |
〇境内の石楠花など
西門の屋根とモミジ |
庭石とモミジ |
石楠花 |
石楠花 |
石楠花 |
西門前にサクランボ |
(3)稲荷神社
本堂の裏手に二つの稲荷神社がある。正一位稲荷神社は、五穀豊穣の稲荷。正一位と付いているのは、鎌倉時代に後鳥羽天皇が、稲荷神の本社である伏見稲荷大社を訪れた際に分霊先でも正一位を名乗ることを許可したことから、全国の稲荷神社が正一位を掲げるようになったという。
横にある瘡守稲荷は、病気平癒の稲荷。瘡守(かさもり)とは、疱瘡(天然痘)から人々を守るという意味。願掛けをするときは土で作った団子を供え病気平癒を祈り、効あって治癒したときには、米の粉で作った本物の団子をお供え、お礼参りしたという。
正一位稲荷神社 |
瘡守稲荷 |
(4)中瀬天祖神社
井草駅から妙正寺公園に行く途中に、中瀬天祖神社があった。
この神社は、江戸時代までは「十羅刹様」などと呼ばれたが、明治時代に神仏分離令により、妙正寺から切り離れ「天祖神社」と改称した。そして井草八幡宮の境外神社にもなった。
羅刹(らせつ)とは鬼神の総称で、十羅刹女(じゅうらせつにょ)とは、仏教の天部における10人の女性の鬼神。鬼子母神とともに、法華経を守護する諸天善神であることから、日蓮宗の妙正寺がここに祀ったものとされる。
もともと十羅刹堂として建てられた神社のご神体は男根上の自然石である。その昔、所沢から田無周辺の人が江戸から帰る途中、急に腹痛を起こし妙正寺に担ぎ込まれた。僧侶の祈祷で腹痛は治ったが、その人が持っていた男根状の自然石を見て、「この石は霊石で、この地で祀られたいから腹痛を起こしたのだ」ということで、この石を十羅刹として祀ったという。この石は井草八幡宮に納められており、例大祭の日には御開帳されるという。
また、1945(昭和20)年頃まで例祭日には社前で餅をつき“舌べろ餅”という丸餅を参拝者に配る習わしがあり、この餅を食べると子宝が授かるといわれ、遠方からも多数の参詣者があったという。舌べろという名は 、この神社が舌状台地の上に建っていることに由来する ようだ。
中瀬天祖神社 |
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舌べろ餅の碑 |
3.妙正寺川
妙正寺川は、妙正寺公園の池を源流とし、」中野区、新宿区を通り神田川と合流する。途中、哲学堂公園付近に妙正寺川調節池がある。
妙正寺川と同じように、武蔵野台地からの湧水から流れる河川がいくつかある。これらの川は、それぞれ拙ブログでもとりあげた公園の池に源流がある。
(1)善福寺川
杉並区から国分寺市から杉並区にかけて流れる善福寺川(源流は善福寺公園)と、妙正寺川(源流は妙正寺公園)が合流して神田川に流れる。神田川の源流は井の頭恩賜公園である。
(参照):
(2)石神井川
石神井川は、小金井公園を源流とし、さらに武蔵関公園、石神井公園の湧水も源泉として、北区王子付近で隅田川に合流する。
隅田川は荒川の支流であるため、神田川も石神井川も荒川水系に属する。また、練馬区、板橋区を流れる白子川(源流は井頭公園)も荒川水系のひとつである。
(参照):
東京異空間88:武蔵関公園と井頭公園(白子川)の桜(2023/3/29)
(3)仙川、野川
仙川は小金井市貫井北町、野川は国分寺市東恋ヶ窪(日立製作所中央研究所内)を水源とし、世田谷区鎌田で合流したのち、二子玉川で多摩川に合流する。従って仙川、野川は多摩川水系に属する。
なお、仙川、野川については、まだ拙ブログでは取り上げていない。
名残りの桜・妙正寺公園 |
残念ながら妙法寺公園のつつじは見頃を過ぎていましたが、名前の由来となっている妙正寺や中瀬天祖神社など、その由来には興味深いものがありました。近くの公園、河川、寺院などを訪れる楽しみでもあります。
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