2023年10月19日木曜日

東京異空間152:芸術の秋にⅦ~立木義浩 肖像/時@写大ギャラリー

 

写真展「立木義浩 肖像/時」

立木義浩の写真展「肖像/時」が、写大ギャラリーで開かれているので観てきました。

1. 立木義浩

立木義浩は、写大ギャラリーのある東京工芸大学の前身である東京写真短期大学の卒業生である。徳島の写真店に生まれた義浩は、高校卒業後、進学先を兄も行ったこの大学に決めた。大学卒業後、兄は立木写真館の4代目に、弟・義浩は写真家になった。兄の大学時代の同級生で写真家の細江英公を紹介され、その仕事を手伝うこともあったという。

その後、立木は1965年に『カメラ毎日』の巻頭56ページにわたって掲載された「舌出し天使」で写真家としてデビューした。69年にフリーランスとなり、ヌードを含む女性を中心とした作品を多く発表するいっぽう、広告・雑誌・出版など幅広い分野でさまざまな写真を撮影し、一躍、人気写真家となった。ほぼ同じ時期の写真家に篠山紀信がいて、立木以上の売れっ子写真家であった。

写真展では「肖像/時」というテーマに沿って、代表作である「舌出し天使」をはじめ、それ以前、20歳で雑誌『アサヒカメラ』に掲載されたポートレイト、40代の代表作であるドキュメンタリー『MY AMERICA』、東寺の国宝を含む仏像、東日本大震災の被災地で撮られた老人たちの肖像、さらには若い学生たちをモデルに近年撮影された作品、そして写真館に生まれた立木の原点を感じさせる親子の肖像など、立木が若き時から現在まで撮ってきた写真作品、あわせて80点が展示されている。

舌出し天使


会場入り口

2.立木写真館

会場の入り口に贈られた花輪が飾られていて、プレートに「萬田久子より」とある。萬田は、義浩の母を主人公として立木写真館をドラマ化したNHK朝ドラ「なっちゃんの写真館」(1980年)に主人公の親友役として出演し、女優デビューしている。また立木の写真集『花気色』などのモデルもしている。なお、主人公・立木の母<立木奈都子>役を演じた星野知子も、この作品でデビューしている。

立木写真館は、曾祖父の時代に創業(1883年)し、徳島市で最初の写真館であった。写真館の公式H.Pには、「ご家族写真は<宝物>だと思う」とのキャッチコピーが書かれている(写真館は2020年に破産)。その言葉通り、写真館に生まれた立木の原点を感じさせる親子の肖像、家族写真が一番印象に残った。

贈られた花輪

勝新太郎・中村玉緒の肖像

私が若いころ写真に夢中になった時期には、立木義浩は、篠山紀信と並んで人気の写真家でした。どちらも、女優やヌードなど女性写真を、当時の写真月刊誌である『カメラ毎日』、『アサヒカメラ』、『日本カメラ』などに発表していました。こうした雑誌もよく見たものです。しかし、これら三大カメラ雑誌もそれぞれ、1985年、2020年、2021年に休刊となっています。

そうした懐かしさもあって、この写真展を観てきました。また、ギャラリーのカメラ展示ケースの中には、色々なメーカーのカメラとともに、当時愛用したニコンのニコマートも飾ってありました。

ギャラリーのカメラ展示

ニコマート

なお、東京工芸大学創立100周年を記念した展覧会「写真から100年」が東京都写真美術館で、11月11日~12月10日まで開催されます。

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