2025年12月9日火曜日

東京異空間372:「装いの翼」@ちひろ美術館とレトロな喫茶店

 

ちひろ美術館

ちひろ美術館で、装いの翼」と題して、いわさきちひろ(1918-1974)、茨木のり子(1926-2006)、岡上淑子(1928-)の三人の作品を展示しているというので観に行きました(2026.2.1まで)。とくに観たいのは岡上淑子の作品です。

岡上については、すでに東京国立近代美術館などでいくつかの作品を観ていますが、コラージュという手法で戦後まもなく活躍しましたが、1957(昭和32)年に結婚し、その後、創作活動からは遠のいてしまったことから忘れ去られ、近年になってあらためて注目されるようになりました。

作品はすべて撮影不可でした。

また、美術館からの帰りに、テレビで取り上げられたレトロな喫茶店に寄ってみました。

1.「装いの翼」展

展示されている三人は、第二次世界大戦後、それぞれ、絵本画家、詩人、美術作家として活動した。この展覧会は、行司千絵・著『装いの翼 おしゃれと表現と―いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』(岩波書店、2025年)を起点に、装いをテーマにしている。

「装いの翼」展


(1)岡上淑子

岡上淑子のコラージュ作品は、写真誌「LIFE」や「VOGUE」などのモノクロ写真を素材とし、切り抜いたものを緻密に貼り合わせることで、不合理なイメージを現出させている。1950年代のモードを色濃く映した女性像は、コラージュの魔術で不思議な夢のようなイメージをまとい、時代を超えた魅力を放っている。

彷徨》 1956

『美しき瞬間』(河出書房新社 2019年)より、岡上の言葉を引いておく。

「私がコラージュを手がけたのは、

日本が敗戦から立ち直りつつあった

復興期でした。

物資はまだ豊かではありませんでしたが、

解放された言葉、

自由、権利、平等といった声が

氾濫していました。」


「おしゃれな女性はモンペを脱ぎすてて、

自分の好きな色、好きな形の服が

着れるようになりました。」


《廃墟の旋律》



「少し落ち着いてからあたりを見回すと、

人の姿はなく、しーんと静まりかえっていて、

雲一つない真っ青な空が

焼け跡を包み込むように

広がっていたのを覚えています。

《廃墟の旋律》という作品を創ったときは、

あの空が鮮やかに思い浮かびましたね。

もしかしたら、あの空が

創らせたのかもしれません。」

(参考):

『美しき瞬間』岡上淑子 河出書房新社 2019

(参照):

東京異空間245:美術展を巡るⅣ-4~MOMATコレクション@東京国立近代美術館2024/11/16

東京異空間311:三つの写真展を観た@ 東京都写真美術館2025/5/7

(2)茨木のり子

茨木のり子は、「わたしが一番きれいだったとき」など、戦後の混乱期を生きた女性の心情を代弁する詩から、「現代詩の長女」とも称され、気骨のある詩人として知られている。茨木が、2006年に亡くなるまでの半世紀を過ごした家が近くにあり、訪ねたことがある。

茨木のり子(昭和21年撮影) Wikipediaより

「わたしが一番きれいだったとき」の一節を引用しておく。

わたしが一番きれいだったとき

 わたしの国は戦争で負けた

  そんな馬鹿なことってあるものか

   ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた。


(参照):

東京異空間40~東伏見稲荷神社とその周辺を歩く2021/12/3

2.「ずん喫茶」

BSテレ東で放送されている「飯尾和樹のずん喫茶」を毎週のように見ているが、ここて取りあげられた喫茶店が、ちひろ美術館の近くにあったので寄ってみた。

この番組はタイトル通り、レトロな喫茶店に入って、美味しいコーヒーや、オススメのメニューを食べて、お店の開店からのエピソードや、店主の人柄などについて語る、喫茶店めぐりの番組である。

最後には、番組のロゴがプリントされたオリジナルのコーヒーカップの余白に飯尾が油性ペンで、メッセージを書き、「勝手ながら『ずん喫茶』に認定です」と言いながら店主に進呈する。 そのコーヒーカップを出してきて見せていただいた。

喫茶店の名は「スナックゆうがお」で、西武新宿線上井草駅から徒歩3分ほどのところにある。マスターは社交ダンスの先生をされていたということで、ダンスの経歴は約30年~40年も。しかし、この先「動けなくなったらどうしよう」と思い、自分のハコを持ちたくて開店したという。 なぜスナックと付いているかというと、元々スナックのお店を居抜きで喫茶店にして、店の名も看板も替えずに、居抜き(?)でそのままにしたからということ。こじんまりとしたスナック、いや喫茶店で、常連のお客さんがひとり、ランチを頼んでいた。

スナックゆうがお

店内・カウンター


番組ロゴ「ずん喫茶」のカップ

飯尾が書いたメッセージ

マスター

こちらも、コーヒーをいただきながら、番組の取材時の模様などを話題にして、番組の飯尾と同じように、店主と楽しい会話をしながら時間を過ごすことができました。

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東京異空間372:「装いの翼」@ちひろ美術館とレトロな喫茶店

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