2023年4月19日水曜日

東京異空間102:仏像写真と美人画~東京都写真美術館・松岡美術館

 

土門拳「古寺巡礼」展

東京都写真美術館では土門拳「古寺巡礼」展が開かれています。また、松岡美術館では、「美しい人びと」展が開かれていました。この二つの美術館で、仏像写真と美人画を観てきました。

1.土門拳「古寺巡礼」~東京都写真美術館

土門拳のライフワークである『古寺巡礼』は、1963年に刊行され、今年は60年を迎える。それを記念しての企画展である。鬼の眼といわれた土門のレンズは、仏像の手や足、衣などをクローズアップして、捉える独自のスタイルで、観る者を魅了する。いわば「美をつかみ撮る」といった写真である。今回、カラーとともにモノクロの写真が展示されていたが、モノクロの迫力に圧倒された。もちろん、大判で焼き付けられていることもあり、写真集などで見るのとは全く違う迫力を感じた。

今回展示されている「古寺巡礼」の中で、私が行ったことのない寺院は、福島の勝常寺と、鳥取の三仏寺投入堂の二つぐらいだと思う。というのも、これまで、むしろ土門拳の写真を見て、その寺院に行き、仏像をみてきたのだから、当然ともいえる。近くは、滋賀・長浜の向源寺(渡岸寺)の十一面観音である。土門拳の写真を見て、このお寺にも行った。その仏像の写真も今回展示されていて、土門拳は顔の背面にある大笑面を見てその晩、眠れなくなった、というコメントが書かれていた。たしかに笑っている面ではあるけど、恐ろしい。それは土門の写真を見ても、実物を見ても。(拙ブログ「湖の国の旅4:湖北・長浜・竹生島」2020/12/20

仏像写真では、入江泰吉の写真によっても導かれて行く寺院、仏像が多かった。ただ、入江は奈良の仏像が中心であり、地方の仏像写真は少ない。また土門の圧倒される迫力とは違い、静かで心象風景まで写し撮る入江泰吉の写真には独特の魅力がある。奈良には入江泰吉写真美術館があるが、関東でも入江泰吉の写真展を開催してほしいものだ。

東京都写真美術館

土門拳「古寺巡礼」展

土門拳「古寺巡礼」展

2.「美しい人びと」~松岡美術館

恵比寿の東京都写真美術館から白金にある松岡美術館にまわった。松岡美術館は、実業家・松岡清次郎のコレクションをもとにつくられた美術館である。コレクションは幅広く、古代オリエントから、古代インド・中国の彫刻、そして現代彫刻まで、また陶磁器も、企画展では近現代の日本画から西洋画まで観ることができる。特にうれしいのは、ここではほとんどが撮影可能であることだ。

企画展「美しい人びと」では、上村松園、鏑木清方、伊東深水などよく知られた美人画に加え、江戸時代の蹄斎北馬(北斎の筆頭弟子)の「三都美人図」が三幅架けられていて見応えがあった。今回の展示の中で、伊藤小坡 (しょうは)(1877-1968)という閨秀画家の作品が3点あった。この画家は、伊勢の猿田彦神社の宮司の長女として生まれ、京都に出て本格的に絵を学ぶ。家庭に入り、大変な苦労をして絵を描き続け、上村松園に次ぐ女性画家という評価を得た。

この画家については、これまで知らなかったが、素晴らしい美人画をみて感動した。こうした画家、素晴らしい絵画を発見し見る楽しみが美術館にはある。

彫刻の常設展では、中国の仏像やインド・ガンダーラの仏像、ヒンズー教の像などが置かれている。これを被写体として、さっき見てきた土門拳の写真を「猿真似」して撮ってみた。

美術館の庭は、緑が広がり、室内にも柔らかい光が差し込んでいた。訪れる人もまばらで、ゆっくりと鑑賞できる。

松岡美術館

松岡美術館「美しい人びと」

蹄斎北馬「三都美人図」

伊東深水「夕涼み」

伊藤小坡「歯久ろめ」

伊藤小坡「虫籠」

伊藤小坡「秋の夕」

<猿真似で?>
如来像

如来の手

如来像

如来像

ヒンズー教の像

美術館フロアに置かれた現代彫刻

美術館の庭の新緑

写真展と美術展の二つを観て、思わず、猿真似してしまいました。これも、芸術のもたらす刺激ということで、ご笑覧いただければと思います。

なお、「古寺巡礼」東京都写真美術館は、5月14日まで、「美しい人びと」松岡美術館は、6月4日までの開期です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京異空間249:明治神宮御苑を歩く

  明治神宮 明治神宮へは参拝に訪れることはありますが、明治神宮御苑には入ったことがありませんでした。 10 月下旬に訪れました。 (参照): 東京異空間 81 :明治神宮 ( 内苑)と神宮外苑Ⅰ ( 2023.3.19 ) 東京異空間 171: 明治神宮外苑はいかにして造ら...

人気の投稿