「本と絵画の800年」練馬区立美術館 |
練馬区立美術館で開かれていた「本と絵画の800年」展(2023/2/26~4/16)に行ってきました。これは吉野石膏のコレクションを展示しているものです。
中世の彩飾写本から印象派の絵画、さらには日本の絵画、美人画まで本と絵画のコレクションを観ることが出来ました。
なお、一部の作品については写真可能でした。
1.吉野石膏のコレクション
吉野石膏といえば、「タイガーボード」のCMで知られている。吉野石膏(株)は創業者から長年にわたり絵画、および貴重書をコレクションしてきた。そうした関係からか、BS日テレ「ぶらぶら美術・博物館」のスポンサーにもなっている。この「本と絵画」の美術展についても3月21日に放送されていた。
吉野石膏のコレクションの多くは、山形美術館にピサロ、ルノワール、モネ、シャガールなどのフランス近代絵画を寄託し、天童市美術館に上村松園、横山大観、東山魁夷などの日本絵画を寄託している。これらは会社の創業(1901年)が山形県であったことによる。
今回の展覧会は、こうした絵画に加え、近年収集された貴重書をはじめて展示し、本と絵画の歴史をたどるという企画となっている。
2.貴重書
中世の写本である「時祷書」の零葉がガラスケースに収まっている。「零葉」とは、本がばらされ一枚ものになったものをいう。時祷書といえば、フランスのシャンティイ城にある『ベリー候のいとも豪華なる時祷書』が世界一美しい本として、よく知られている。
展示されている「時祷書」の零葉は、一枚ものでも美しい彩飾が描かれている。一枚のものであるから裏面も見られるようにガラスケースに入れられている。
こうした彩飾写本がどのように作られたかがわかる写字台に向かう写字生が描かれた絵とともに、実際の写字台が展示されていた。(ここまでの展示は撮影可能であった)
中世の彩飾写本から、近代の木版による昆虫や鳥などの挿絵が入った博物誌や、ウィリアム・モリスのケムスコット・プレスをはじめとする美しい本が展示されていた。なかでも、シャルル・ペローの『眠れる森の美女と赤ずきん』の挿絵は周りの装飾とともに、美しい。
この本は、エラー・プレスといわれ、印象派の画家カミーユ・ピサロの長男、リュシアン・ピサロによってつくられた美しい本だという。
時祷書「聖セバスティアヌス」1455年頃 |
時祷書の零葉 |
詩篇集 15cごろ |
「キリストの生涯」零葉 1488年 |
「キリストの生涯」零葉 1495年 |
鎖付き聖書と書見台 1901年 |
エウローパの凱旋 |
写字台 |
写字台に向かう写字生 |
「ヴァチカンのラファエロのロッジャ」より柱装飾 1772-77年 |
「ヴァチカンのラファエロのロッジャ」より柱装飾(部分) |
フラ・アンジェリコ「リナイウォーリ祭壇画」(模写) |
フラ・アンジェリコ「リナイウォーリ祭壇画」部分(模写) |
フラ・アンジェリコ「リナイウォーリ祭壇画」部分(模写) |
フラ・アンジェリコ「リナイウォーリ祭壇画」部分(模写) |
ヤン・ファン・エイク「ジャヴァンニ・アルノルフィーニの肖像」(模写) |
3.絵画
絵画の展示では、印象派のルノワール、モネ、などがあったが、なかではゴッホの静物画が印象に残った。1886年の作品で、ゴッホが弟・テオを頼ってパリに移り、印象派の影響を受けて明るい色調の絵を描くようになった初期の絵である。また、20世紀に描かれたシャガールの絵は、その幻想的で、物語性のある絵であった。
日本絵画では、伊藤若冲の「萬歳」という二幅の墨絵があり、若冲らしく、軽妙で洒脱な筆使いであった。とくに印象に残ったのは、川原慶賀による「長崎港図」である。江戸後期の長崎港を俯瞰し、出島などの街並みや、港に入る数多くの船などがリアルに描かれている。
そのほか、上村松園、鏑木清方の美人画や、現代では東山魁夷の絵も展示されていた。魁夷の森の中に一本の桜があり、それが湖面に映っている風景画に、タイトルが「春映」とあった。東山魁夷は絵につけるタイトルが素晴らしいと思う。もちろん、いわゆる東山ブルーといわれる美しい色彩の絵が素晴らしいのだが。
なお、練馬区立美術館は昭和60年(1985)に開館した。図書館も並設され、広場にはいろいろな動物などのファンタジーな彫刻が置かれている。
練馬区立美術館 |
広場に置かれている動物の彫刻 |
美術館フロア |
この「本と絵画」をテーマとした展覧会は、なかなか見応えがありました。なんといっても、吉野石膏という会社が、これだけ素晴らしい本と絵画をコレクションしていることにびっくりしました。
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