船田玉樹<花の夕> |
地下鉄東西線の竹橋でおりると、東京国立近代美術館があります。この周辺には、皇居、千鳥ヶ淵、北の丸公園など桜の見どころもあります。
「美術館の春まつり」と題して、展覧会が開かれていました(2023.3.17~4.9)。桜を描いた日本画、また杉浦非水の「百花譜」が展示されていて、美術館周辺のリアルな桜と描かれた桜の競艶(?)を楽しむことが出来ました。さらに、奈良原一高の「ヨーロッパ・静止した時間」から何点から写真が展示されていました。なお、これらの作品は撮影可能でした。
1.絵で見る桜
「美術館の春まつり」のポスターにも使われている飛び散るようなピンクの桜を描いたのは、船田玉樹<花の夕>。屏風に描かれている桜は、菊地芳文<小雨ふる吉野>。山桜だろうか、花と一緒に葉が描かれているのは跡見玉枝<桜花図屏風>。伸びた枝先に小鳥が描かれているのは、鈴木主子<和春>。極端にデフォルメされた桜と紅葉、波と月が描かれているのは、加山又造<春秋波濤>。
また、杉浦非水の「百花譜」から桜の絵、「八重桜(やへざくら)」と、「染井吉野(そめゐよしの)」。非水は、愛媛・松山に生まれ、モダンな図案(デザイン)を得意とし、三越のポスター・デザインなども手掛けた。
どの作品も、それぞれ桜の美しさを描き出している。観る側も椅子に座ってゆったりと春の時間を過ごしているようだ。まさに日本的な時間といえる。
船田玉樹<花の夕> |
菊地芳文<小雨ふる吉野> |
跡見玉枝<桜花図屏風> |
鈴木主子<和春> |
加山又造<春秋波涛> |
杉浦非水「百花譜」から「八重桜(やへざくら)」 |
杉浦非水「百花譜」から「染井吉野(そめゐよしの)」 |
2.奈良原一高『ヨーロッパ・静止した時間』
奈良原一高については、このブログ「東京異空間」を始めた一番最初にとり上げた(「奈良原一高展を観た」2019/12/15)。それは、世田谷美術館で開催された「奈良原一高のスペイン-約束の旅」と題された企画展で、やはり『ヨーロッパ・静止した時間』から選ばれた作品が展示されていた。
奈良原一高は、長崎・軍艦島で撮った『人間の土地』で、一躍注目される写真家となった。その後、ヨーロッパを旅して3年後に発表したのが『ヨーロッパ・静止した時間』である。これらの作品には、ヨーロッパの異様な空間が構成されている。
奈良原の写真には、日本とヨーロッパの異空間、人間の「内」と「外」の異空間、さらには時間の過去・現在・未来の異空間が重層的に構成されているように思う。
「塔」ポンペイ 「塔」セゴビア 「樹」パリ 「樹」パリ 「化石」ポンペイ 「化石」ポンペイ 「化石」フィレンツェ 「化石」ヴィネツィア 「秘密」バルセロナ 「秘密」バルセロナ 「秘密」ヴェネツイア 静止した時間「ナポリ」 写真集『ヨーロッパ・静止した時間』
3.美術館周辺の桜
美術館周辺のリアルな桜。3月末だが、早くもツツジが赤い蕾を膨らませていた。
さすがに、もう「宇和島駅」の看板はない |
「眺めのよい部屋」から皇居 |
皇居の桜 |
皇居の桜 |
向こうはパレスサイドビル |
美術館の通り |
美術館の通りの桜 |
美術館の通りの桜 |
ツツジの蕾に桜の花が |
4.国立公文書館
美術館を出て桜を眺めながら、坂を少し上がると国立公文書館がある。ここは、歴史資料として重要な公文書等を保管展示している。常設展示では、あの有名になった元号「平成」、そして「令和」と書かれた額が展示されている。あらためて時代の移り変わりを感じさせる。
左側手前が「国立公文書館」、その横が「東京国立近代美術館」、奥にパレスサイドビル |
5.旧東京近代美術館工芸館
公文書館のさらに先には赤煉瓦の重厚な建物が建っている。この建物は、「近衛師団司令部庁舎」として、明治34年(1910)に、田村鎮(やすし)の設計により建てられた。
さらに昭和52年(1977)からは、東京国立近代美術館も設計した谷口吉郎の設計に基づき展示室など改装して、東京近代美術館工芸館として使われていたが、2020年に工芸館は金沢に移転してしまった。
いまは分室となっているようだが、かつては、ここで素晴らしい工芸品とともに、歴史的建築をじっくり味わうことができた。
東京国立近代美術館に来たのは、昨年の暮、「大竹伸郎」展を観に来て以来です。その時は、「東京国立近代美術館」の看板とともに「宇和島駅」の看板が建てられていましたが、さすがに今はありません(「東京異空間75:二つの美術館」2022/12/17)。
この春、美術館とその周辺を巡って、リアルな桜、描かれたイマジナリーな桜とともに建物や年号に見る時間の空間など、さまざまな異空間に接することができました。
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