2023年4月6日木曜日

東京異空間92:パレスサイドビルと九段会館

 

パレスサイドビル屋上からの眺望

地下鉄東西線の竹橋駅は、毎日新聞社などが入るパレスサイドビルの地下にあります。美術館に行く前に、ここの屋上に上がってみました。屋上は、平日のお昼休み時間帯(11301400)に開放されていて、このビルで働く人たちの憩いの場となっています。うまくタイミングが合い、初めて屋上に上がることができ、竹橋周辺の桜も一望できました。

竹橋から千鳥ヶ淵の桜を観ながら、ぐるりと廻って九段下に出ました。こちらには九段会館テラスが昨年10月に新しくオープンしました。かつては軍人会館と呼ばれていたビルです。ここからの桜の眺めも素晴らしいものでした。

1.パレスサイドビル

パレスサイドビルは、毎日新聞社などの入るオフィスビルとして、東京オリンピックの2年後、1966年に建築家・林昌二の設計により建てられた。戦後にはリーダーズ・ダイジェストの東京支社が、A・レーモンドの設計により建てられていた。

すでに東京異空間69:パレスサイドビル(2022/7/15)と東京異空間75:二つの美術館(2022/12/17)でもとり上げたが、今回は初めてこのビルの屋上に上がることができた。屋上は、広々としていて、花壇などもつくられ、都会のオアシスのようになっている。ここからは竹橋周辺、皇居、東京国立近代美術館、まわって首都高速、その先には如水会館、学士会館も見える。

屋上に小さな社が建っている。「毎日神社」とある。この神社は、昭和14年(1937)に毎日新聞社が国際親善のため企画した双発機「ニッポン」号が世界一周を達成する安全祈願として創建された。神社は、このビルが建てられた昭和41年(1966)に、ここに祀られた。

もうひとつ、このビルには伝書バトの彫刻が置かれているはずだが。伝書バトは新聞社の原稿を運ぶ手段として使われていたことから、このビルには6羽の伝書バトが置かれている。毎日新聞の記者は「永田町方面を見ているハトもいる。タカを警戒しているのか」というコラムを書いたという。残念ながら、今回は伝書ハトを確認することが出来なかった。次回このビルを訪れた時に確認してみたい。

屋上から向かいが東京国立近代美術館

屋上から平川門

屋上から首都高の横に如水会館、間の低いのが学士会館

屋上

屋上でのひととき

屋上の「毎日神社」

周辺の主要な場所までの距離を示す表示板

金網の階段

パレスサイドビル

竹橋・渡ると東京国立近代美術館

2.九段会館テラス

戦前は、「軍人会館」と呼ばれたこのビルにもいろいろな歴史が残されている。建物は昭和9年(1934)に、昭和天皇の即位の礼の記念として建てられた。当時は在郷軍人会の本部が置かれ、軍人の訓練、宿泊施設として使われた。昭和11年(1926)に起きた二・二六事件では戒厳司令部が置かれた。戦後は、GHQに接収され「アーミーホール」と呼ばれ進駐軍の宿泊施設として使われた。その後、「九段会館」と改称してレストラン、結婚式場として、またコンサートにも使われ、サザンオールスターズは1978年にここでデビューしたという。

平成23年(2011)の東日本大震災により大きな被害を受け、休館、廃業に追い込まれた。そして、昨年2022年10月に古い建物の一部を保存し、新たなビルを建て「九段会館テラス」という名称で再開した。

「軍人会館」としての建物の設計は、コンペにより小野武雄が一等賞となり、技術顧問に伊東忠太を充てて建設された。コンクリート造りに瓦葺の屋根を載せる「帝冠様式」と呼ばれる建築様式の建物であった。ほかに帝冠様式の代表的な建築としては、上野・東京国立博物館の本館がある。伊東忠太らによって推進された日本趣味の建築様式で、当時のモダニズム様式の建築家からは反発があった。

こうした歴史を持つ建物の一部を保存し、高層のモダンなビルと共存させて「九段会館テラス」として建て直された。まさにモダン様式と帝冠様式の融合した建物は、歴史のアイロニーともいえる。

九段会館テラスからは、正面に皇居のお濠「牛ケ淵」の桜、武道館、さらには靖国神社の大鳥居、高灯籠、銅像などが見渡せる。

九段会館テラス・手前が旧の会館、奥の高いのが新ビル

旧建物を残した入口

お濠に面した九段会館テラス

九段会館テラスの桜

クラシックな内部

ガラス張りのフロア

ガラス張りのフロア

5階にあるカフェレストラン

テラスからの通路

ガラスに映るお濠の桜

武道館

牛ケ淵の桜


九段の高灯籠

高灯籠の横に銅像・品川弥次郎像

夕暮れに

夕暮れに、飛行機も

夕暮れの桜

パレスサイドビルの屋上から、皇居、美術館、首都高、如水会館などをぐるりと見渡し、屋上にある小さな社に参拝しました。パレスサイドビルから東京国立近代美術館を観て、さらに千鳥ヶ淵をまわり、九段下の九段会館テラスに入りました。どこを見ても、桜、さくら、サクラ。しかし、それぞれのビルには深い歴史刻んでいました。桜とともに、時間の異空間も楽しむことができました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京異空間249:明治神宮御苑を歩く

  明治神宮 明治神宮へは参拝に訪れることはありますが、明治神宮御苑には入ったことがありませんでした。 10 月下旬に訪れました。 (参照): 東京異空間 81 :明治神宮 ( 内苑)と神宮外苑Ⅰ ( 2023.3.19 ) 東京異空間 171: 明治神宮外苑はいかにして造ら...

人気の投稿